【フェムテックとは?】市場規模と関連企業一覧
男女共同参画社会が叫ばれるようになって久しく、現在では男性も女性も等しく働ける企業が増えています。
しかし、生理・妊娠・出産・母乳育児など女性特有の悩みを抱えている人は多く、働きながら健康とのバランスを取ることに悩んでしまうケースもあるでしょう。
今回は、近年注目されている「フェムテック」について解説します。
市場規模や関連企業・商品サービスにも触れますので、プレゼンティーズムを抱える社員に目を向けるきっかけとしてお役立てください。
【フェムテックとは】
フェムテック(=FemTech)とは、女性(=Female)とテクノロジー(=Technology)を組み合わせた言葉です。
女性特有の健康問題をテクノロジーで解決することを目的としている商品・サービス・ツール全般を指す言葉であり、女性の社会参画に欠かせない要素として注目されるようになりました。
「生理を気にせずストレスフリーかつアクティブに働きたい」と考える女性を支持する取り組みであり、2020年10月には自民党内で「フェムテック振興議員連盟(フェムテック議連)」が発足しています。
自社に就業している女性に長く働いてほしいと考える企業からも賛同を集め、個人単位でなく企業単位でフェムテックを後押しするケースも増えるようになりました。
【フェムテックが注目されている理由】
ここでは、今あえてフェムテックが注目されている理由を解説します。
昔から根強く残っている問題でありながらなぜ今フェムテックに着手している企業が増えているのか知ることは、視野を広げる大きなきっかけとなりそうです。
➢ 女性特有の健康問題による労働損失額が分かったから
2019年3月に経済産業省ヘルスケア産業課がまとめた「健康経営における女性の健康の取り組みについて」では、生理やPMS(=月経前症候群)に伴う労働損失が4,911億円にのぼるという統計調査が出ています。
生理痛で欠勤・遅刻・早退をしたり休憩を長めに取ったりすることによる損失は、一見小さなものに見えても日本全体で合算すると大きなマイナスであることが分かったのです。
また、女性特有の健康問題に紐づく通院による経済的負担は930億円、ナプキン・タンポン・低用量ピルなど医薬品購入による負担は987億円とされており、合計で7,000億円近い負担があるとされています。
こうした調査をきっかけに、企業レベルでも健康経営を通じて女性特有の課題に対応し、働きやすい社会環境づくりが急務とされるようになりました。
生産性向上や業績向上のためにも、欠かせない視点であると言えるでしょう。
➢ 妊活・不妊治療による退職が相次いでいるから
順天堂大学などの調査によると、妊活や不妊治療が原因で離職・解雇を経験した働く女性は全体の17%にあたるとされています。(※参考:日本経済新聞「不妊治療で女性の6人に1人が離職 順天堂大など調査」)
不妊治療は頻繁な通院が必要であり仕事と両立できるようなスケジュールの調整が難しいほか、検査の内容によっては体への負担が強く、体調不良で有給を使い果たしてしまうケースも出ています。
企業が不妊治療に関する正しい知識を持っていないことも多く、職場の理解不足が原因で辞めざるを得ないこともあるでしょう。
こうした望まぬ離職は、女性本人やその家族だけでなく雇用主である企業にもマイナスだと言えます。
フェムテックの活用による退職予防やワークライフバランスの維持を試みながら、お互いwin-winな働き方が模索されているのです。
➢ フェムテック市場規模がどんどん拡大しているから
2021年10月には、日本経済新聞にフェムケア&フェムテック市場が急拡大しているという記事が掲載されました。(参考:日本経済新聞「矢野経済研究所、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場調査の結果を発表」)
前年比103.9%の597億800万円の市場規模となっており、売上だけでなく導入企業数が増えていることも分かります。
また、世界全体での市場規模は2018年段階で1.8兆円でしたが、2025年には5.3兆円になることが予測されています。
「フェムテック=生理・妊娠・出産」というイメージがありますが、更年期ケアやセクシャルウェルネスに関する視点が広がったことも大きな要因だと言えるでしょう。
今やベンチャーおよびスタートアップ企業だけでなく、大企業でもフェムテック事業に参画するケースが増えています。
ジェンダー平等などSDGsの視点も広がるなか、企業の社会的責任のひとつとしてフェムテックの開発・導入に乗り出している企業もあるのでしょう。
➢ テクノロジーが年々進化しているから
IT技術・AIなどテクノロジーが年々進化することで、個人の問題とされがちだった女性の健康問題に関するデータが収集しやすくなっています。
スマートフォンアプリ上で今の自分の体調をワンタップするだけでも、開発元企業には膨大なデータが集まります。
集まったデータを分析・検証していけば、適切なアプローチがしやすくなるでしょう。
自分の生理周期を正しく知って健康管理に役立てるなど個人的な取り組みもできれば、上司や人事部を通さず気軽に婦人科医師に相談するなど企業が健康を支える取り組みも可能です。
個人の体に関する話題であるためデリケートな話題として配慮される一方、オープンな空気で適切に相談できる仕組みづくりをすることも、求められているのかもしれません。
【フェムテックの具体例とは?関連企業3社】
ここからは、フェムテックに関する具体的な商品・サービス・ツールを紹介します。
関連企業名もピックアップしながら紹介しますので、拡大中でありながらまだまだ知名度の少ないフェムテックを理解するためにお役立てください。
➢ 株式会社エムティーアイ|生理日管理ツール「ルナルナ」
株式会社エムティーアイが手掛ける「ルナルナ」は、生理日・排卵日予測をはじめとした体調管理をサポートするサービスです。
妊娠希望の有無に合わせて的確なアドバイスをしてくれるほか、妊活・妊娠中・出産後も使えるツールとして成長してきました。
2001年にサービスリリースして以降、今では270万人を超える女性ユーザーを獲得しています。
東京都と妊活支援で提携するなど、行政との連携もおこなっています。
女性をターゲットとした商品を販売している企業からの広告出稿も多く、国内フェムテックのパイオニアとして話題になっています。
➢ 株式会社Lily MedTech|痛みのない乳房用超音波画像診断装置
株式会社Lily MedTechは、乳がんの早期発見と検診率向上のため、超音波による痛みのない画像診断装置の開発に着手しています。
「マンモグラフィーは乳房を押さえる必要があり痛い」「デンスブレスト(高濃度乳房)による影響を受けるから正しい診断か分からない」というネガティブな印象を変えるため、フェムテックに取り組んでいます。
東京大学発のベンチャー企業としても知られており、代表取締役自身が家族を癌で亡くした経験から会社の設立に至っています。
なかにはLily MedTechによる診断装置を導入している医療機関を名指しで提携医療機関にする企業もあり、自社で働く女性を守りたいという企業にも受け入れられていることが分かります。
➢ 株式会社ファーストリテイリング|GUブランドで吸水ショーツ
UNIQLOで有名な株式会社ファーストリテイリングは、GUブランドで吸水ショーツの販売をおこなっています。
中高生など若い人が多く利用するアパレルブランドでフェムテック商品を販売することは、女性の健康問題に関心を持つきっかけにもなるでしょう。
低価格で気軽に試せることも、消費者の心を掴む要因となっています。
また、ファーストリテイリングではオムロンヘルスケア株式会社と協働事業をおこない、フェムテックに関するメディアの運営も手掛けています。
正しい知識を広く普及させたいという企業の姿勢が分かる取り組みであり、大企業にしかできない参画をしていることが分かります。
【まとめ】
一見すると女性だけの問題に見えてしまう健康問題でも、広い視点で見回すと実は社会全体が抱える問題であることも少なくありません。
特に女性の社会進出が進み、妊娠・出産・育児・介護などライフプランが移り変わっても継続して働き続けたいと考える人が増えている時代において、健康と仕事を両立させることは重要な課題だと言えるでしょう。
現在では、ベンチャーから大企業まで幅広くフェムテック事業に参画しています。
弊社も「不妊治療と仕事の両立のサポート」に向けた住友生命との協業を行っております。
(ご参考:プレコンセプションケア領域での企業向けソリューションの共同開発に向けた実証実験スタート)
FairWork surveyでは、女性特有の健康問題を抱えたまま働く社員がいないか把握することが可能です。
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