【企業でプレコンセプションケアを推進することの意味】
少子化が叫ばれている昨今、労働人口の減少に伴う人手不足やターゲットユーザーの限定化が問題視されるようになりました。
共働き家庭が多くなっていることも影響し、企業による仕事と子育ての両立支援対策にも注目が集まっています。
今回は、妊娠・出産をケアする「プレコンセプションケア」について解説します。
企業単位で新たな取り組みをするきっかけとして、プレコンセプションケアの視点を導入していきましょう。
【プレコンセプションケアとは】
プレコンセプションケアとは、世界保健機関(WHO)の定義では「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」とされています。
妊娠・出産・子育てをしたいか自分たちのライフプランを見直すと共に、希望するカップル・家庭に対する継続的な支援をする手法として確立してきました。
例えば、下記のような支援が全てプレコンセプションケアに当たります。
- 産婦人科による妊娠・出産セミナー
- 保健師・助産師による個別カウンセリング
- 生命保険会社による出産に備えたマネープランづくり
- 社労士による産前産後に申請できる補助金の解説
- 妊婦のいる家庭・妊娠を希望する家庭に対するワクチンの早期接種
上記に加えて、「自社で働く社員に対するプレコンセプションケア」も広がりつつあります。
出産を希望する社員を支え、妊婦健診や不妊治療を会社全体でサポートすることで与えられる安心感は非常に大きなものとなるでしょう。
下記で、企業によるプレコンセプションケアの重要性を詳しく解説します。
【企業がプレコンセプションを推進する意義・メリット】
ここからは、医療機関・市区町村だけでなく企業が自社社員向けにプレコンセプションケアをする意義・メリットについて解説します。
社会的な意義と自社に与えるメリットを両方紹介するため、参考にしてみましょう。
➢ 出生率向上・ライフプランの実現に貢献する
企業によるプレコンセプションケアは、出生率の向上やライフプランの実現をサポートすることにつながります。
例えば内閣府が実施している出産・子育てをめぐる意識調査では、仕事と育児の両立に悩む家庭が多いことが浮き彫りになっています。
「理想の子ども数を持たない理由」を見ると、「妻の仕事(勤めや家業)に差し支えるから」「夫の仕事の事情があるから」など、仕事を理由に出産を諦める家庭がいることが分かりました。
また、妊娠・出産を理由として会社を退職した女性は全体の33.9%を記録しており、下記のような退職理由が挙げられています。
- 仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで諦めた
- 仕事の内容や責任等が変わり、やりがいを感じられなくなった
- 妊娠・出産に伴う体調の問題で仕事を辞めた
- 勤務地や転勤の問題で仕事を続けるのが難しかった
- 妊娠・出産・育児を期に不当な取り扱いを受けた
- 会社に産前産後休暇や育児休業の制度がなかった
- 産前産後休暇や育児休業を取れそうもなかった
- 職場に育児との両立を支援する雰囲気がなかった
- 保育所が見つかりそうもなく復職できるか不安だった
会社を挙げて妊娠・出産をサポートすることは、子どもを持ちたい家庭にとって大きな支えとなるでしょう。
不本意な理由で退職せざるを得ない人を少なくするためにも、企業によるプレコンセプションケアが重要だと分かります。
➢ 男女共同参画社会の基礎をつくる
企業によるプレコンセプションケアは、男女共同参画社会の実現に向けた取り組みとしても有効です。
前述した内閣府の調査では、妊娠・出産のために会社を退職する女性が33.9%いることが分かりました。
「仕事の内容や責任等が変わり、やりがいを感じられなくなった」などマミートラックに陥ったことが原因で退職する女性がいるなど、根深い問題があることが浮き彫りになっています。
また、「夫が多忙で家事・育児への協力が得られないから」という理由も挙げられるなど、出生率の低下が女性だけの問題ではないと言えるでしょう。
男性社員も女性社員も仕事と育児を両立しやすい企業であれば、こうした問題は解消されます。
企業によるプレコンセプションケアは、男女共同参画社会の礎を築く取り組みだと言えるでしょう。
(マミートラックについてはこちら:【マミートラックとは?】モチベーション対策をして離職防止!)
➢ 自社社員の安定・定着につながる
プレコンセプションケアをして育児との両立がしやすい仕組みづくりができれば、自社社員の安定・定着につながるでしょう。
妊娠・出産を理由に社員が退職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。
新しい社員を雇用するための採用・育成コストが増大するだけでなく、これまで蓄積されてきたノウハウの共有不足によるパフォーマンスダウンやナレッジの流出にもつながります。
時には職種・勤務地・雇用形態を変えるなど一定の配慮をして就業を継続してもらった方が、会社にとってメリットが大きくなります。
本人の理想を聞きながら今後のキャリアプランを立てていけば、会社だけでなく本人にとってもメリットの大きい取り組みとなるでしょう。
また、「会社に妊娠・出産をサポートしてもらえた」と感じることで、会社への信頼が増すケースも多いです。
産休・育休でブランクが空いたとしてもエンゲージメントが高い状態で復職してくれる可能性が高まるため、プレコンセプションケアが非常に有意義なものであると分かります。
➢ サスティナブル企業として内外にアピールできる
プレコンセプションケアは、サステイナブル企業を目指す取り組みの一環としても効果的です。
サステイナブルに関する取り組みは幅広く、環境問題対策・貧困支援・教育サポート・エネルギー革新研究など多岐に渡ります。
妊娠・出産・子育ての支援や仕事との両立をサポートすることは「パートナーシップ達成」や「ジェンダー平等」に関する取り組みとして定着しており、既に多くの企業が参入を果たしました。
プレコンセプションケアについて社内外に広めることができれば、サステイナブル企業としての立ち位置を得ることができるでしょう。
ブランドイメージ向上施策としても有効であり、企業単位でもメリットがあると分かります。
【企業によるプレコンセプションケアの一例】
最後に、企業によるプレコンセプションケアの一例を紹介します。
プレコンセプションケアの具体的な施策を知りたい方は、目を通してみましょう。
➢ 妊娠・出産・不妊治療に関するカウンセリングを実施する
自社が提携している産業医または公認心理師と、妊娠・出産に関する心理的負担を軽減するカウンセリングを実施する手法です。
不妊治療や妊活など直属の上司には相談しづらいことであっても、専門家であれば相談しやすいと感じる人は多いでしょう。
また、仕事を休んで産婦人科に行きづらいという心理的ハードルを抱える人であっても、就業時間に利用できるカウンセリングであれば利用してもらえる可能性が高まります。
なかには、LINE・チャット・オンライン会議システムを活用し、遠隔で相談できるシステムを構築している企業もあります。
地方の支店を持つ企業やテレワーク社員の多い企業であっても、カウンセリングを設けることが可能です。
➢ 妊娠と仕事の両立に関するアンケートを実施する
妊娠と仕事の両立に関する意識調査をするため、自社の社員に対して匿名のアンケートを実施する手法です。
直接のヒアリングでは浮き彫りにならない自社の課題が分かったり、社員の本音や理想を確認できたりする可能性が高いでしょう。
また、女性社員だけでなく男性社員にも実施することも効果的です。
「妻と一緒に不妊治療をしている最中なので、通院や検査のためにもっと有給を使いたい」
「チームメンバーが産休・育休に入ると業務過多になりそう。人員を増やしてほしい」
など、別角度から問題を分析するきっかけになるかもしれません。
妊娠・出産を支える側である50代以降の社員にもアンケートを実施するなど、さまざまな活用方法が考えられます。
【まとめ】
企業によるプレコンセプションケアは、自社の生産性を向上させるだけでなく、SDGsに貢献する社会的意義があります。
社員にとっても働きやすい環境が作れることから、今後更に広がっていくことでしょう。
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