【ダイバーシティ経営とは?】意味やメリット、事例は?
ダイバーシティ経営とは、「多様な人材を生かし、その能力が最大限発揮される機会を提供する経営手法」と定義されています。(引用:経済産業省「価値創造のためのダイバーシティ経営に向けて」より)
今回は、ダイバーシティの意味や目的を見直しながら、経営においてなぜダイバーシティが必要か、そのメリットを再確認していきます。
実際にダイバーシティ経営に着手している企業の事例も紹介するため、参考にしていきましょう。
【ダイバーシティ経営をするメリット】
早速、ダイバーシティ経営をするメリットを解説します。
社会的なメリットもありますが、ここでは実施企業側のメリットに焦点を当てていきましょう。
➢ プロダクトイノベーションが起きる
社内に多様な人材がいると、異なる分野の知識・経験・価値観を持ち寄れます。
結果として自社の商品・サービスに新たな視点が加わり、プロダクトイノベーションを起こしやすくなるでしょう。
年齢・性別の枠組みを超えて高く評価される商品を開発できたり、少数でありながら根深い悩みを抱えている人に対する革新的なサービスが生み出せたり、新たな発想が生まれます。
➢ プロセスイノベーションが起きる
どんな人でも確実に業務を遂行できるようマニュアルを見直すことで、プロセスイノベーションが起きます。
プロセスイノベーションとは、商品の開発・製造・販売するための手法を改革することであり、成功すれば業務効率改善やパフォーマンス向上に寄与するでしょう。
限られた時間でも高い成果を出せたり、ミスやトラブルのないクオリティ重視の業務ができたり、さまざまなメリットが得られます。
➢ 職場環境を改善できる
自分の能力を最大限発揮できる職場環境になれば、社員から得る企業評価も変わります。
従業員エンゲージメントが向上して離職率が低下したり、良い口コミが広がって優秀な人材を効率よく採用できたりすることもあるでしょう。
働きがいのある職場として認められることでワークエンゲージメントそのものが上がるなど、誰にとってもポジティブな成果が現れます。
モチベーション向上施策としても有効であり、社内改革の一環としてダイバーシティ経営に着手する企業も少なくありません。
➢ 外的評価が向上する
働き方の多様化が注目されている昨今、早い段階でダイバーシティ経営に着手する企業は外的評価が向上しやすいことも特徴です。
例えば、高齢者や障害者に対する偏見・差別がなく間口を広くしている企業は、採用市場でも高く評価されることとなるでしょう。
女性管理職や小さな子どもを養育するパパ社員・ママ社員の多い企業には優秀な人材が集まりやすく、市場評価も高くなることが多いのです。
コーポレートガバナンス・コードにおいても多様性や人的資本経営に関する項目が設けられているため、株式市場における評価対策としても効果があります。
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【ダイバーシティ経営の土壌づくりに欠かせない要素とは】
どのようなダイバーシティ経営をするかは、企業ごとの目的意識や課題に応じて変動します。
しかし下記の要素は必須とされることが多く、長期的に成功させるためには取り組んでおきたい項目だと言えるでしょう。ひとつずつ詳しく解説します。
①人材登用制度
多様な人材を積極的に登用できるよう、間口を広げることが重要です。
例えば、これまで見てきた採用市場に出てこない人材がいないか、広い視野を持ってみましょう。
これまで自社組織のなかで多数派・主流派ではなかった人材にも着目してみると、新たな可能性に気づけるかもしれません。
「ポジティブ・アクション」という言葉は男女の雇用機会平等について語るときによく使われますが、高齢者・障害者・外国人労働者の雇用においても同様のことが言えます。
固定的な役割分担をなくし、働く意欲と能力のある人が活躍できる社会になるよう、自社にできることを考えてみることが理想です。
②人事評価制度
社員の属性や働き方に関わらず、職務やパフォーマンスに応じた公平・公正かつ透明性の高い人事評価制度を採用することもひとつの手段です。
個々の社員に期待する役割や人事評価結果に関するフィードバックを1on1ミーティング内で実施したり、業績評価・能力評価・情意評価を組み合わせた多角的な評価シートを用意したり、さまざまな手法があるでしょう。
例え思うような人事評価結果でなくとも、納得感のある内容であれば社員からの評価が高まるものです。
「会社はきちんと自分を見てくれている」という精神的な安心感や満足度は、ダイバーシティ経営を支える基盤となります。
③勤務環境や体制の整備
勤務環境や体制を整備することで、多様な人材が活躍しやすい場とすることも効果的です。
近年は、勤務時間・場所に柔軟性を持たせられるよう、フレックスタイム制度やテレワーク制度を設けている企業が増えてきました。
また、サテライトオフィスを設置して通勤の不便さを改善したり、リゾートワークによるワークライフバランスの向上を意識したりする企業もあります。
労務管理の見直しも、体制整備策として有効です。
残業・休日出勤の削減をするために業務効率を改善するほか、有給の取得を推奨することもできるでしょう。
結果的に、残業ができないパパ社員・ママ社員の支えとなったり、地方に住む人でもテレワークで就労できたり、多様化を認める環境が整うのです。
④社員の意識改革・能力開発
多様な人材を対象とした人材研修をおこない、スキルアップやキャリア教育のきっかけとしていくことも大切です。
自分の強みが何か、最大限スキルを活かすにはどのような道に進むべきか、社員本人に考えるチャンスを与えやすくなるでしょう。
キャリアのために自主的に努力する姿勢が見られたり、会社のためにより貢献したいと考える前向きな行動が見られたり、両者にとってメリットが現れます。
多様な経験を積んだ人材を広くネットワーク化し、身近なローモデルを形成することもおすすめです。
理想的なモデルは地域・支店の差なく広く共有するなど、自部署だけでは得られない視野を設ける機会も作りましょう。
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【ダイバーシティ経営に成功している企業事例】
最後に、ダイバーシティ経営に成功している企業事例を紹介します。
どんな人材にフォーカスを当てるかも企業ごとに異なるため、参考にしてみることをおすすめします。
【キリンホールディングス株式会社】:女性マネジメント層の登用
キリンホールディングス株式会社では、縮小するビール市場において新たな顧客ターゲットを開拓できるよう、女性や主婦に対する新たな商品開発を意識しています。
商品開発部に女性を多く配置し、マネージャーやリーダーなど責任のあるポジションも積極的に任せるなど社内改革をおこない、斬新なアイディアや女性ならではの声を収集するよう心がけました。
また、女性比率の少なかった営業・生産の現場にも人を配置するなど工夫し、女性登用を強化しています。
【株式会社きものブレイン】:障害者支援委員会の立ち上げ
着物・浴衣などを多数取り扱う株式会社きものブレインでは、社内に障害者支援委員会を立ち上げています。
「知的・精神支援チーム」や「車椅子支援チーム」などに細分化し、複数のプロジェクトを立ち上げることで自然な社内競争も呼び起せるようになりました。
障害特性に合わせた業務の配分や理想的なコミュニケーションに関するノウハウも蓄積され、現在では多くの障害者を採用する企業として注目されています。
【株式会社スタートトゥデイ】:6時間労働制の導入
「ZOZOTOWN」などを手がける株式会社スタートトゥデイでは、6時間労働制を導入しています。
フルタイムでは働けない育児中の社員、介護・体調不良を抱える社員・長時間労働に体力・集中力の面で課題を抱える高齢社員などに支援され、15時には退勤できるシステムを作り上げています。
根本には、顧客応対システムの見直しやソリューションシステム導入による業務効率化がありました。
限られた時間でも最大のパフォーマンスを発揮し、業務のやり残しがないよう工夫することで実現できた施策だと言えるでしょう。
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【まとめ】
ダイバーシティ経営を成功させるには、スモールステップで成功事例を積み上げていくことが大切です。
また、ダイバーシティ経営によるしわ寄せが既存社員に偏らないよう、誰にとってもメリットのある施策としていくことがポイントとなるでしょう。
まずは自社の課題や問題点を見つめなおし、成功可能性の高い施策から優先して着手してみてはいかがでしょうか。
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