社員のモチベーションを上げる方法!【ハーズバーグの二要因理論】
モチベーションの高い社員の多くいる会社とそうでない会社には、どのような違いがあるのでしょうか。
さまざまな業界で顧客のニーズが多様化し、経営マネジメント手法も多彩になってきています。
今回のコラムでは、社員のモチベーションを上げる方法として「ハーズバーグの二要因理論」を紹介します。
社員のモチベーションを上げるモチベーションマネジメントにおいて、基礎となる理論の一つですので、ご参考いただければ幸いです。
【モチベーションマネジメントとは?】
モチベーションとは、人が動くきっかけになる「動機」や「やる気」のことです。
社員個人のモチベーションが上がると、作業効率や集中力が高まり、会社全体として生産性向上や離職率低下などのメリットがあります。
企業において人手不足をカバーしつつも成果を上げていくためには、社員のモチベーションを維持・向上させる「モチベーションマネジメント」が重要となるのです。
社員がどのような環境で、どのような状態であれば、モチベーションが高まるのかを調査した研究が数多く存在します。
その中でも特に知名度が高いのが「ハーズバーグの二要因理論」です。
【ハーズバーグの二要因理論】
ハーズバーグの二要因理論とは、職務満足に関する理論で、モチベーションを高めるには「衛生要因」と「動機づけ要因」をそれぞれ分離して考慮することが重要であるという考え方です。
この理論は、アメリカの心理学者であるフレデリック・ハーズバーグ(Herzberg,F.1959)が提唱したもので、アメリカのピッツバーグにおいて、エンジニアや経理職など200人を対象に、職務満足感の調査を行い導き出したものです。
産業化が進むにつれ、個人の生産能力がより一層求められていた当時、何が従業員にとってのモチベーションとなるのかが研究課題でした。
従業員が仕事を遂行するやる気や職場に対して抱く思いなどを調査した結果、ハーズバーグは二要因理論を提唱しました。
この研究を通じて、”メンタルヘルスは時代の中核課題である”というハーズバーグが掲げてきた信念を、さらに証明することになり、ハーズバーグの研究の中で最もメジャーなものとなりました。
モチベーションマネジメントは、いつの時代にもあらゆる領域で大きな課題となります。
大変シンプルかつ重要な主張であるハーズバーグの理論は時代を超えて、新しい研究結果などと組み合わせながら、多くの場で取り入れられています。
・「衛生要因」と「動機づけ要因」
二要因理論は「衛生要因」と「動機づけ要因」から構成されます。順に解説いたします。
◇衛生要因
衛生要因とは、「作業条件」や「給与」など、物理的な報酬のことです。
- 仕事の”環境”に関するもの
- 満たされてもモチベーションアップ自体にはつながらないもの
衛生要因は満たされていないと職場に対する不満足度が上昇しますが、満足度を高めるわけではありません。
◇動機づけ要因
動機付け要因とは、「責任」や「達成感」など、仕事の内容に対する充実度であり、心理的な報酬のことです。
- 仕事の”内容”に関するもの
- 満たされるとモチベーションアップにつながるもの
動機付け要因が満たされていなくても、不満足度が高まるわけではありません。
上記をまとめると、「衛生要因は動機づけのための前提条件であり、十分条件にはならない」、ということです。
職務満足を構成する達成感や仕事の責任などの「やりがい」こそ、モチベーションを高めるためには必要であるという点が特徴です。
【社員のモチベーションを上げる方法】
では社員のモチベーションを上げるためには、二要因理論をどのように活かすのが良いでしょうか?
ここでは、衛生要因と動機づけ要因を組み合わせながら、心理的な満足度を充足させる手法が求められます。
たとえば、下記のような工夫が挙げられます。
- 仕事の一部ではなく、全体を任せることで、やりがいや達成感をより多く感じさせる
- フレックスタイム制やリモートワークを組み合わせ、勤怠管理を本人主導にする
- 仕事上の役割にかかわらず、社員1人1人の声に耳を傾け、個人を尊重している姿勢を伝える
このように、自己効力感を高め、社員のモチベーションを上げるような仕組みを労務管理に取り入れることが効果的です。
業種・業態によっての限界はありますが、物質的な報酬でやる気を引き出そうとするのではなく、”心理的な働きかけでやる気を引き出す”という点は重要です。
また、バランスが取れていることも大切です。
「動機づけ要因は高いが、衛生要因が低すぎる」といった状況は、“やりがい搾取“の典型でもあります。
やりがいを高めることだけに注力するのではなく、モチベーションを維持するためには衛生要因を整える事が前提であることを忘れてはなりません。
【まとめ】
人生の多くを仕事に費やす現代人にとって、良い職場に必要な要件を模索することは、生き方を考えることでもあります。
ハーズバーグの二要因理論の研究では、職務満足度には、「衛生要因」と「動機づけ要因」が関与していることが示されました。
モチベーションマネジメントを推進するうえでは、報酬や労働条件だけでなく、個人の能力差や、キャリア展望の違いなど、多次元の要因が影響し合うことの理解が重要です。
データ収集やPDCAの見直し、職場環境の整備など、あらゆる方面で努力と工夫を重ねていくことが重要ですが、モチベーションを高める“やりがい”は、研究データやマネジメント手法の実践だけでは捉えづらい人間同士の交流から生じるものであることもまた事実です。
常に、企業も人間も発展途上であり、正解は一つではありません。それでも、どうしたらよりよく働けるか、より良い業績を上げられるか、 を考え続けること自体に価値があるのでしょう。一人一人が立場に関わらず、対話を重ねて知見を深めていくことがこれからの社会には必要です。