【プロティアンキャリアとは?】現代に求められるキャリア自律について
時代のニーズやトレンドの変遷が激しくなっている昨今、価値観のアップデートが必要なシーンは多いものです。
キャリアや働き方についても、同様のことが言えるでしょう。
10~20年前にはなかった考え方が広く浸透していることから、これまでになかった新たなキャリアを見据える人も増えています。
今回は、先の読めない社会情勢において必須となる「プロティアンキャリア」について解説します。
自分のキャリアについて考えたい人はもちろん、社員に対するキャリア自律支援施策を考案中の人事部ご担当者様まで、広くご参考ください。
【プロティアンキャリアとは?】
プロティアンキャリアとは、経済などの環境変化に対応しながら、自らの働き方や能力を柔軟に変えていける変幻自在なキャリアのことを指します。
アメリカの心理学者であるダグラス・ホールによって提唱されました。
「組織の中よりもむしろ個人によって形成されるものであり、時代とともに個人の必要なものに見合うように変更されたもの」と定義されており、相互依存的な関係のなかにおけるキャリアだと言えるでしょう。
(引用:ダグラス・ホール『プロティアン・キャリア 生涯を通じて生き続けるキャリア』より)
社会のニーズはもちろん、トレンド・国際情勢・社会的評価などに合わせて柔軟にキャリアを変更・形成していくことの重要性が謳われているのです。
また、キャリア形成のゴールを組織からの評価ではなく「自己成長・やりがい・充実感」だと据えていることも特徴です。
【プロティアンキャリアと従来のキャリア観との相違点】
プロティアンキャリアの考え方は、日本に昔から浸透している従来のキャリア観と異なる点が多数存在します。
下記では項目ごとに細分化しながら解説していくため、より詳しくチェックしてみましょう。
➢ 主体となる人
プロティアンキャリアにおいて、主体となるのは「個人」です。
一方、従来のキャリア観では「組織」が主体となることが多いでしょう。
終身雇用制や年功序列型の評価が当たり前であった時代において、個人の成長と組織の成長はほぼ同義でした。
自社で高く評価さえしてもらえていれば、会社や時代が変わっても対応できるスキルを身に着ける必要がなかったのです。
しかし、バブルの崩壊やリーマンショックの影響を受け、終身雇用制を取りやめる企業が増えています。
年功序列ではなく実績やスキルに応じて若手でもどんどん昇進させるなど、新たな風が増えているでしょう。
こうした時代では、「個人」が主体となって会社に依存しないキャリアの形成が欠かせません。
転職・独立などを視野に入れ、自分だけの強みを持とうとしているプロティアンキャリア型の人材が増えているのです。
➢ ゴール・価値観
プロティアンキャリアがゴールとして掲げるのは、自由・成長など心理的な成功です。
一方で従来のキャリア観では、昇進・昇格など目に見える地位や給与の高さだとされていました。
つまり、働くこと自体に満足感を得るワークエンゲージメントの考え方が浸透しつつあると分かります。
働いていることに誇りを持ち、成長を実感できる機会があり、自分で自分を尊敬できるようなサイクルが築けていればプロティアンキャリアの形成ができるでしょう。
例え同年代と比較して高い給与・役職であっても、社会的に評価されない仕事や自分にとって違和感のある仕事は歓迎されなくなっているのです。
(ご参考:【ワークエンゲージメントとは?高める方法とその尺度】)
➢ アイデンティティ
ビジネスシーンにおけるアイデンティティとは、「ビジネスパーソンとしての自分らしさ」を指します。
プロティアンキャリアの場合、「自分が何がしたいのか」を追及するアイデンティティを持つ人が多いでしょう。
しかし従来のキャリア観の場合、「自分は何をするべきか」と受け手側の立場で考えることが多いのです。
これには、キャリア形成の主体者が個人であるか組織であるかの違いが大きく関わっています。
主体者が個人であればアイデンティティの主語も当然「自分」になり、本当にやりたいことを考え抜くことが可能です。
主体者が組織の場合、アイデンティティの主語も「組織」になるため「組織が求めていること」をやろうとするでしょう。
自己への気づきをもつことが、プロティアンキャリアの第一歩だと分かります。
➢ アダプタビリティ
アダプタビリティとは、時代・環境に対する対応力のことを指します。
プロティアンキャリアが形成されていると、最大の関心ごとは市場の動きやニーズの変遷になるでしょう。
一方で従来のキャリア観では組織内における動きが重視されることが多く、学閥・派閥に基づいた後継者争いや出世レースに関心が集まっていたのです。
つまり、市場もしくは組織どちらにおける生き残りを重視しているか、大きな違いが現れます。
プロティアンキャリアのように時代の変遷に強いキャリア思考ができていれば、おのずと視野も広くなるのです。
【プロティアンキャリア形成に向けて実施されていること】
最後に、プロティアンキャリア形成に向けて実施されている施策を紹介します。
ここでは企業における人的資本経営の観点から解説するため、参考にしてみてください。
➢ キャリア自律の促進
キャリア自律とは、個人が自分のキャリアについて自発的に考え、向上心を持って努力している状態のことを指します。
「どんなビジネスマンとして成長したいか」という本人の理想・希望を重視しながら人材教育をしていく手法であり、会社の理想と照らし合わせながら人材教育を施します。
理想が合致できていればモチベーションに基づいた自発的なスキルアップを期待しやすく、優秀な人材の発掘・育成に貢献するでしょう。
社員みずから受講する研修を選択できたり、自発的なスキルアップを助けるオンライン研修を手厚くしていたりする企業もあります。
管理職や経営層が強烈にけん引せずとも、自走力を持って努力できる人が増えるのです。
(ご参考:【キャリア自律とは?】企業のメリットと事例について解説)
➢ ジョブ型雇用の実施
ジョブ型雇用とは、仕事内容を事前に提示して人材を募集する採用手法のことです。
勤務時間・勤務地・配属先部署・仕事内容など細かく求人票に記載もしくは面接時に提示してから採用する手法であり、やりたい仕事を選択したいビジネスマンから評価を集めるようになりました。
従来の「入社してから適性を判定し人事配置をおこなう」という、新卒型の採用とは大きな違いがあります。
ジョブ型雇用はミスマッチの予防や業務パフォーマンスの最大化に貢献するだけでなく、スペシャリストの育成とも相性がよいことで有名です。
時代が移り変わっても通用するスキル・考え方を習得したいプロティアンキャリア型人材には、特に歓迎される採用手法だと言えるでしょう。
近年は新卒採用でも職種や勤務地を指定した求人が増えており、採用市場の変化が見て取れます。
(ご参考:【ジョブ型雇用とは?】メンバーシップ型雇用との違いについてわかりやすく解説)
【まとめ】
プロティアンキャリアは、会社だけに依存しないキャリア形成を支える重要な考え方です。
変化の激しい時代だからこそ、変化に柔軟なビジネスマンとして成長できるよう自分のキャリアを見つめなおしてみましょう。
また、プロティアンキャリアを支援する企業は市場変化に敏感な人材から評価されやすくなります。
自社の人事評価体制・教育体制などをチェックし、改革できそうなポイントがないか探ってみてはいかがでしょうか。
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