【企業のリスクマネジメントとは?目的や分析手法について】
長く市場に受け入れられる企業になるためには、前のめりの成長戦略だけでなく、リスクマネジメントが欠かせません。
いわゆる「守りの戦略」と取られることも多く、会社を守るため・健全な企業活動を続けるための取り組みとして注目されています。
今回は、企業のリスクマネジメントについて目的や分析手法を解説します。
どんなリスクが想定されるのかにも触れますので、あらかじめ対策しておきたいと考える場合にお役立てください。
【企業活動の根本を揺るがす「リスク」の種類】
ここでは、どんなリスクが生じる可能性があるのか改めてリストアップしていきます。
自社が十分な対策を構築できていないリスクがないか調査するためにも、ぜひ目を通してみてください。
➢ 戦略リスク
戦略リスクとは、会社をより成長させるための戦略を見誤ってしまうリスクです。
戦略づくりの前提となる事業環境の変化や市場ニーズの移り変わりによって生じることが多く、想定と現実の乖離が大きくなればなるほど損害が増えていきます。
代表的なものとして、下記のような戦略のミスが挙げられるでしょう。
- 経営戦略(新規事業・設備投資・研究開発・M&A・事業継承など)
- マーケティング戦略(市場ニーズの変化・価格戦略・広報宣伝など)
- 人事戦略(採用難・離職・メンタルヘルスなど)
近年はビッグデータ分析などを取り入れて多角的に将来予測しようとする企業が増えているのは、戦略リスクを割けるための意味合いも強いとされています。
➢ 財務リスク
財務リスクとは、保有する資産・負債の価値が変動することで発生するリスクです。
貸借対照表などの財務面から発生するリスクであり、下記のようなものが挙げられます。
- 資金調達(負債増加・負債比率拡大)
- 与信(取引先の倒産により売掛金の焦げ付き・貸し倒れ)
- 価格変動(為替・金利・景気変動・原材料価格の高騰)
資金調達方法の再検討・借入・社債発行・株式増資など多彩な対策法がありますが、財務に関するノウハウやナレッジを蓄積することが肝心だと言えるでしょう。
➢ ハザードリスク
ハザードリスクとは、地震・台風・水害・火山噴火・干ばつ・ハリケーンなどの天災や、火事・事故など予測困難な突発的要因によって発生するリスクです。
例えば、地震によって会社の設備が全て失われたり主要な取引先が被災して仕入れが困難になったりするケースが挙げられます。
また、会社の設備やステークホルダーへの被害だけでなく、社員が出勤できなくなることによる業務不能状態に陥る可能性なども検討して対策していく必要があるでしょう。
他にも、下記のようなリスクが挙げられます。
- サイバー攻撃
- システムダウン
- 交通事故による創業者・経営者の怪我
- 設備・機材の誤作動
- 新型コロナウイルスなどの感染症
予測が難しいリスクであるからこそ、日常的なリスクマネジメントの重要性が問われています。
➢ オペレーショナルリスク
オペレーショナルリスクとは、役員・従業員の不正・過失・瑕疵・怠慢によって発生するリスクです。
例えば、下記のようなリスクが挙げられます。
- 法務(法令違反・知的財産権侵害・個人情報漏洩・横領・贈収賄など)
- 品質(産地偽造・製品の瑕疵・製造物責任・リコールなど)
- 環境(環境汚染・廃棄物処理・汚染物質など)
- 労務(セクハラ・パワハラ・労災・過労死・・メンタルヘルスなど)
企業としてのモラルやコンプライアンスを問われることが多く、社内外からの評価や市場における立ち位置を損ねることにつながります。
信頼回復にはそれなりの時間がかかるため、項目別にリスクマネジメントをしている企業も少なくありません。
【リスクマネジメントをする目的】
次に、リスクマネジメントをする目的を明確にしていきましょう。
もちろんリスクが発生しないことがベストですが、万が一発生したときのことも考え、対策を練っていくことが大切です。
➢ リスクを低減させるため
リスクマネジメントの目的として最も大きいのは、リスクを低減させることにあります。
万が一リスクが発生しても被害を最小限に抑えられれば、損害は少なくなるでしょう。
また、リスクが発生する可能性を下げることもリスク低減施策として有効です。
具体的な例をいくつか挙げますので、参考にしてみましょう。
- 日常的に従業員の組織サーベイをおこなってメンタルヘルス不調や退職の兆候に気づき、速やかにサポートを実施する
- 個人情報を保護するため、許可された管理・監督者しか社内サーバーにアクセスできないようにするなど社内セキュリティレベルを引き上げる
- 全ての工場に耐震補強をおこない、地震が起きても従業員や機材に生じるダメージを最小限に抑える
➢ リスクを回避するため
リスクを生じさせる要因そのものを排除し、リスクが起きないようにする方法です。
ここでもいくつか具体的な例を挙げて紹介します。
- 予想される最大損失額と比較してリターンが見合わない場合は新規事業を断念する
- 従業員のパソコン全てにウイルスブロックソフトをインストールし、外部からの不正アクセスやハッキングを予防する
- ハラスメント防止研修を実施して従業員のコンプライアンス意識を高める
あらかじめ回避できそうなリスクであるにも関わらずきちんと回避策を取らなかった場合、企業の責任度合いが重いと指摘されることも少なくありません。
損害が発生してから対策しようにも手遅れであるケースも多いため、あらかじめリスクマネジメントをしておきましょう。
➢ リスクを移転させるため
文字通り、リスクを自社以外に移転させる方法です。
代表的な施策として、下記が挙げられます。
- 保険に加入して万が一のトラブル発生時に損失を補填できるようにする
- 社会保険労務士・税理士・会計士など専門家に業務をアウトソーシングする
- 自社のサーバールームを専門のデータセンター事業会社に移設する
対策したいリスクの種類ごとに専門家(専門企業)を頼ることが多いと言えるでしょう。
最終的な責任は自社に問われることが多いですが、自社のノウハウやナレッジだけでは十分なリスクマネジメントができないと判断された場合、外部の力を頼ることも非常に有効です。
➢ リスクを保有するため
リスクだと分かっている状態ではあるもののあえて何も対策せず、リスクを保有する方法です。
トラブルが起きることを前提としているケースもあり、受け入れ可能な損失であればあらかじめ保有の対策をすることが可能です。
- 何人か辞退することを予想し、最終的に採用したい人数以上に内定通知を出す
- 償却が済んだ古い社用車に盗難保険をかけず自己資金で対応する
なかには、本当はリスクマネジメントをしたいのに効果的な対処法が思いつかないため、やむを得ずリスクを保有しているケースもあります。
このような場合には下記を参考にリスクマネジメントに関する分析をおこない、対策を考えていく必要があります。
【リスクマネジメントの分析手法】
リスクマネジメントは、下記の通り分析しながら対策法を考えることが重要です。
- 原則の設定・リスクの特定
- フレームワークづくり
- 対策の検討・実施
- モニタリング・改善
➢ 原則の設定・リスクの特定
まずは、原則の設定から実施します。
何のためにリスクマネジメントをするか、リスクマネジメントをすることでどれくらいのコストや人員がかかるか、もしリスクマネジメントをしなかったときの損失・損害はどれくらいになるかなど、細かく分析していきましょう。
保有することなく何らかの対策をすべきリスクを特定したら、次のステップに進みます。
➢ フレームワークづくり
フレームワークづくりは、リスクを敏感に察知するためのシステムづくりと言い換えることができます。
例えば従業員のメンタルヘルスやモチベーション管理に危機感を抱く企業であれば、人事部・労務部などが中心メンバーとなって組織サーベイツールを導入することがリスクマネジメントのきっかけとなるでしょう。
リスクマネジメントを展開するに当たっての体制づくりをおこない、プロジェクトチームを発足させます。
➢ 対策の検討・実施
次に、具体的な対策法の検討・実施に移ります。
前述した事例であれば、自社に合った組織サーベイツールを選定したりオンボーディング・設定・従業員への通知・管理などをおこなうステップです。
いよいよリスクマネジメントを実行する段階であり、当初の目的とズレがないか都度確認していくことが重要です。
➢ モニタリング・改善
最後に、モニタリング・改善をおこないます。
狙い通りの効果が発揮できているか、問題がある場合はどこをいつまでにどう改善するのか話し合い、PDCAサイクルを回しながらチェックしていきましょう。
モニタリング・改善は一度では終わらず、時期を分けて繰り返し見ていくことが大切です。
【まとめ】
リスクマネジメントは万が一トラブルやリスクが発生した際、企業活動を支える重要な要素となります。
特に働き方改革・ワークライフバランス・ストレスチェックなど人的資本に対する注目度が高まっている昨今、退職・メンタルヘルス・過労・労災など従業員関連のトラブルには最大限の対応をしておく必要があるでしょう。
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個人と組織のコンディションを定期的に可視化することで自社が抱えているリスクが浮き彫りになる可能性もありますので、リスク特定のために役立てていきましょう。
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