ストレスチェックと診断はどう違う?【役割を比較!】

ストレスチェックと診断はどう違う?【役割を比較!】

会社で年に1回実施するストレスチェックは、簡単な質問票(アンケート)に回答するだけで自分のストレス状態を可視化できる便利な制度です。

ストレスと健康状態の関係について認識するきっかけとなり、メンタルヘルスケア意識を高めたりメンタル不調の早期発見・早期予防に貢献することで注目されました。

誤解されることもありますが、ストレスチェックと医師による診断は明確に異なります。今回はそれぞれの違いや高ストレス者判定を受けた後のフローについて解説します。

目次

ストレスチェックと診断との違い

早速、ストレスチェックと診断との違いを解説します。ストレスチェックで高ストレス者として判断されても、医師による診断と同じ意味合いにはならないことを知っておきましょう。

ストレスチェックはスクリーニング検査

ストレスチェックとは、従業員のメンタルヘルスに関する質問票(アンケート)を用いて自分のストレス状態を調べる簡単なスクリーニング検査です。

自分自身の置かれている職場環境や、ストレスレベルに対する自発的な気づきを促すためのものであり、セルフケアを助ける制度として導入されました。診断との違いは、あくまでも簡易的なスクリーニング検査であるという点にあります。

つまり、高ストレス者判定されても、それだけでは診断ではありません。高ストレス者と判定された後、精神科や心療内科といった医療機関を受診し、詳細な心理検査や問診を経て、はじめて医学的な診断が下されるという流れになります。

診断は医師による病状の判断

診断とは、患者の症状・病態・問診・身体所見・検査結果などをもとに医学的な観点から疾患の内容を判断することです。医師による診察を伴うことが必須であり、医師の診察を受けないまま診断されることはありません。

つまり、ストレスチェックをはじめとするスクリーニング検査は、あくまでも可能性を疑うものであり、医師による診察を経て診断へ移ることがポイントです。

ちなみに、ストレスチェック後の産業医面談は医師が実施しますが、ここでも通常、就業上必要な措置についての意見書が出されるまでです。診断は医療機関で行われるものと覚えておきましょう。

ストレスチェックで高ストレス者判定されたときの対処

ストレスチェックで高ストレス者とわかったときの対処法

ストレスチェックの結果、もし自分が高ストレス者とわかったら放置せずに対応しましょう。自分でも気づかないうちにストレスが蓄積している場合、ある瞬間をきっかけに急に不調に陥る可能性もあります。

まずはストレスの原因がどこにあるのか知り、適切な対処法を学んでおきましょう。

職場で面接指導を受ける

まず大事になるのは、職場で面接指導を受けることです。ストレスチェックで高ストレス者判定が出た従業員がいた場合、会社側には本人に面接指導を受けられることを案内することが義務づけられています。

高ストレス者本人から面接指導の希望があれば実施されるので、遠慮なく願い出ましょう。なお、面接指導とは、ストレスチェックで高ストレス状態にあると判定された従業員におこなうものであり、担当できるのは医師に限られています。

面接を実施する医師や、面談の報告を受ける人事担当者には守秘義務があるため、「直属の上司には知られたくない」「職場の人に悩みを知られなくない」という悩みについてもその旨を相談しましょう。

面接指導の場では、下記のような内容についてヒアリングされることが多いです。

  1. 残業・休日出勤の有無および頻度
    過労が起きていないか、十分に休息が取れているかなどを確認します
  1. 早退・遅刻・欠勤などの有無および頻度
    体調不良やメンタル不調が原因のプレゼンティーズムが起きていないか確認します
  1. 職場環境
    温度・湿度・職場の設備・清潔さ・雑音の大小などストレスの原因が環境にないか確認します
  1. 社内における人間環境
    セクハラ・パワハラ・職場内いじめがないか、相談しやすい上司がいるか確認します
  1. ワークライフバランス
    子育てや介護との両立・プライベートの充実に課題がないか確認します
  1. 既往歴や生活状況
    飲酒・喫煙・睡眠状況・運動頻度など生活習慣や既往歴を確認します
  1. 今生じている症状の有無
    寝つきが悪い・気分が落ち込む、など症状が現れていないか確認します

他にも、個別の悩みに応じて問診が入る可能性があります。また、就業が可能な状態か総合的に判断したり、医療機関を受診した方がいいかのアドバイスをもらうことも可能です。

就業上の措置を取ってもらう

上記のような面接指導を経て、職場でのストレス因が強いと医師が判断した場合、医師の意見によって、就業上の措置を相談することも可能です。

具体的には、下記のような就業上の措置が考えられます。

  • 個人に課せられている営業ノルマを下方修正してもらう
  • 責任の重い大きなプロジェクトから外してもらう
  • チーム制で仕事を担当するなど責任と役割を分担してもらう
  • 業務車両の長時間運転を制限し、こまめな休憩時間を確保してもらう
  • 深夜残業や休日出勤の命令を避けてもらう
  • リモートワークやサテライトオフィス勤務を認めてもらう
  • 時短勤務・時差出勤・フレックスタイムを認めてもらう
  • 適性のある部署へ異動させてもらう

ただし、もちろん本人が希望すれば全ての措置を通してもらえるというわけではありません。面接指導を担当する医師が意見を出し、会社と相談しながら業務や環境の負荷を軽減していきましょう。

症状が出ていれば病院・クリニックに相談する

既にメンタル不調の症状が出ている場合は、早めに病院・クリニックに相談することが大切です。

面接指導や産業医面談の際に相談して受診が適切か意見をもらったり、場合によってはクリニックを紹介してもらえる場合もできるので相談してみましょう。

特に、下記のような症状が出ている場合は要注意です。

  • 何をしていても楽しくない
  • 布団に入っても眠れない、寝つきが悪い
  • 目が覚めても体を起こせない
  • 仕事の疲れが取れず気力がない
  • 食欲がない(もしくは食べ過ぎてしまう)
  • 以前と比べて明らかに集中力が落ちている
  • 頭痛・肩こり・めまい・胃の不快感・動悸・便秘や下痢
  • いつも緊張している、手が震える

「集中力がない」「無気力で何も楽しめない」などは、気のせいだと無視してしまいがちです。また、頭痛・胃の不快感などは風邪と勘違いしやすく、市販薬などを服用しながら症状をごまかしてしまうこともあるでしょう。

どちらも2週間以上症状が続くなど、一時的な症状の域を超えている場合、早めに受診することが大切です。

診断を得るメリットはあるの?

最後に、医師による診断を得るメリットを解説します。なぜストレスチェックによるスクリーニングだけでなく、場合によっては医療機関を受診する必要があるのか、意義を再確認しておきましょう。

今後の対策が練りやすくなる

医療機関で医師による診断を得ると、自分がどんな疾患で悩まされているのか客観的に理解できます。

疾患に合わせた治療方法を探ったり、効果的な薬を処方してもらえたり、ピンポイントでアドバイスを得られたりするので、早期治療に貢献するのです。

また、診断や主治医の意見があることで職場からの理解も得られやすく、就業上の措置を講じてもらいやすいというメリットもあります。今後の対策を練りやすくするためにも、困ったときは遠慮なく医師に相談しましょう。

傷病手当金を申請できる可能性がある

症状によって就業に制限が必要と診断された場合、傷病手当金を申請できる可能性があります。

傷病手当金を申請するには医師の診断が不可欠であり、ストレスチェックのようなスクリーニング検査だけでは申請ができません。

現在、上記のような症状に悩まされているものの、「もし休職になってしまったら経済的に心配」という理由で相談できないという事情がある場合は、一度主治医に相談してみるのが良いでしょう。

まとめ

ストレスチェックは簡単かつ便利にストレス状態を可視化できるものであり、メンタルヘルス予防の第一歩として効果的です。診断は医師によって医学的な観点から疾患の内容を判断するものであり、ストレスチェックとは異なることを理解しておきましょう。

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