【退職勧奨とは?】違法にならない言い方や注意点について
手厚く指導・教育しても業務パフォーマンスが著しく悪い人や、社内で深刻な人間関係のトラブルを繰り返す人は、人事の頭を悩ませる存在でもあるでしょう。
何度指導しても問題が改善しない場合、やむを得ず退職勧奨しなければいけないシーンも出てきます。
しかし、退職勧奨は言い方や状況次第では違法性が問われることもあるため、注意しておきましょう。
今回は違法になる退職勧奨・ならない退職勧奨の違いと注意点を解説します。
【退職勧奨すること自体は違法でない】
退職勧奨とは、従業員に対して自主的な退職を促すことを指します。
ときには退職に向けて、話し合いの場を設けて雇用契約解消に向けた合意づくりをしたりするシーンもあります。
こうした退職勧奨自体は、違法ではありません。
労働者に「職業選択の自由」が与えられているのと同じく、企業側にも「採用の自由」「解雇の自由」が与えられているのです。
民法627条では「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。 この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する」と定められており、企業・労働者どちらからでも雇用契約は解消できます。
一方、不適切な手段で退職勧奨した場合、「人格権を侵害する不法行為(民法709条)」にあたるとして違法性が認められるケースもあります。
過去の労働裁判では企業側に違法性があるとされた判例もあり、退職勧奨は十分に注意して実行すべきだと言えるでしょう。
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【違法になる退職勧奨の言い方と具体例】
ここでは、違法になる退職勧奨がどのようなものか、チェックしていきましょう。
実際に違法性があるとされた判例をもとに、特徴を探ります。
➢ 精神攻撃を伴う退職勧奨
早めに退職してほしいあまり、精神攻撃や極端なプレッシャーを与え続けることによるアプローチは違法性が問われるため注意が必要です。
具体的な事例として、下記が挙げられます。
- 「自ら退職しなければ給料を下げる」など、脅しをする
- 「どうせ何の仕事もできない」など、人格否定をする
- 家族・親族・友人など周りの人も非難の対象にする
- 退職に応じないことを理由に職場いじめ・無視をする
エンゲージメントやモチベーションの低下を理由に自ら退職する人が多いとはいえ、精神攻撃によるアプローチを続けることは人格権の侵害に該当します。
労働者側は必ずしも退職勧奨に従う義務はないことを知り、双方の話し合いを重視する必要があるでしょう。
➢ 身体攻撃を伴う退職勧奨
直接的な身体的攻撃はもちろん、時間外の拘束・間接的な攻撃なども違法とみなされることがあります。
- 机を叩く(蹴る)・大声を出すなど、間接的な身体攻撃をする
- 退職に応じるまで何時間も面談を続ける
- 同僚と接することのない部屋に隔離して業務させる
- 必要のない時間外勤務・特殊作業を命じる
精神攻撃と同様、パワハラとみなされる可能性があるため要注意です。
嫌がらせのため明らかに過大な業務を与えること、反対に仕事をあたえないことも過労やストレスを招く要因となり、労災に発展する恐れがあります。
➢ 理不尽もしくは理由が不明確な退職勧奨
退職勧奨する理由は原則として問われないものの、明らかに理不尽もしくは理由が不明確な退職勧奨は心証を悪くします。
特に下記のような理由で退職勧奨する場合、正当性が問われる可能性があるでしょう。
- 特別に課された過大なノルマが未達であることを原因とする退職勧奨
- 上司に嫌われた・不興を買ったなど個人的な理由による退職勧奨
- 妊娠・出産・傷病・障害を理由とする退職勧奨
「退職を求めるレベルではない」とみなされた場合、当然ながら退職勧奨に応じてもらうことはできません。
業務パフォーマンスにどれだけ深刻な影響を与えているのか、雇用し続けることによる損害がどの程度あるのか、客観的に証明する材料が求められます。
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【違法にならない退職勧奨の言い方と注意点】
最後に、違法にならない退職勧奨をする方法および注意点を紹介します。
退職勧奨のゴールは「退職してもらうこと」ではなく「双方納得できる話し合いをして着地点を見つけること」にあります。
下記に十分配慮しながら、攻撃にならない退職勧奨をしていきましょう。
➢ 退職勧奨面談の時間・場所・メンバーに十分配慮する
退職勧奨をする際は、対象の従業員を個別に呼び出して面談するのが一般的です。
しかし、「面談時間が長すぎる」「面談の頻度が多すぎる」「面談が勤務時間外におこなわれる」場合、精神攻撃であるとみなされることがあるでしょう。
チームメンバー全員で対象の従業員に退職勧奨したり、面談ブースに複数の上司が入ってプレッシャーを与えたりすることも禁物です。
基本的に、退職勧奨面談は勤務時間内で実施しましょう。
時間が長くなりすぎないよう(頻度が多くなりすぎないよう)配慮し、事情説明や条件交渉など目的を明確にすることも大切です。
➢ 言葉を選びながら説得する
退職勧奨時はお互いの主張がぶつかり合うことも多く、厳しい物言いや説得口調になってしまうことも少なくありません。
立場の強い上司側が強い姿勢に出た場合、パワハラと判定されることもあるため注意が必要です。
常に冷静な姿勢を保ち、誹謗・中傷・名誉棄損・人格否定につながる発言をしないよう意識しておきましょう。
また、従業員が明確に退職を拒否した場合は無理に退職勧奨を継続しないなど、引き下がることも大切です。
➢ 双方納得する条件を付け加える
どうしても話し合いだけで解決しない場合、双方納得する条件を付け加える方法があります。
代表的な条件として、下記が挙げられます。
- 退職金・解決金を上乗せする
- 有給休暇を追加で与える(転職活動の期間を設ける)
- 再就職先を斡旋する
- 転職エージェントの利用費用を負担する
- 会社都合の退職にする
特に、会社都合の退職を求められることが多いと知っておきましょう。
離職票の退職事由コードが「会社都合の退職」となっていた場合、失業保険給付の期間が優遇されるなどメリットが得られます。
転職先にも納得感のある退職理由を示しやすくなり、自己都合対象とは毛色が異なるとアピールできます。
ただし、会社都合の退職があると助成金・補助金の申請要件を満たせなくなるケースがあるため注意が必要です。
今給付を受けている助成金がある場合や、今後申請を検討している補助金がある場合、要件と照らし合わせながら慎重に判断する必要があるでしょう。
➢ 客観的に証明できる退職勧奨事由を収集する
退職勧奨が妥当かつやむを得ないものだと証明するため、証拠となるデータ・情報を収集することも大切です。
- 欠勤・早退・遅刻の日数および比率
- 業務パフォーマンス(契約率・解約率など)の低下を示す定量評価
- 顧客から寄せられているクレームの声
- 過去に実施した教育・研修・指導の内容および頻度
まずは「なぜ退職勧奨をしているか」、理由を理解してもらいましょう。
少し業務パフォーマンスが悪いだけで見放しているのではなく、「繰り返し教育・研修・指導をしているものの改善されなかった」と示すことも必要です。
ただし、伝え方次第では執拗な精神攻撃だと受け取られてしまう可能性もあるため、どこまで本人に伝えるかは検討する必要があります。
大まなか理由だけ伝え、具体的な証拠資料は話がこじれてしまったときや労働裁判に発展してしまったときの材料に留めるなど対策しておきましょう。
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【まとめ】
退職勧奨は、企業側・従業員側どちらにとっても大きなストレスとなります。
また、周りのチームメンバーに与えるネガティブな印象も強く、可能な限り早期解決・早期合意に至る必要があるでしょう。
本記事を参考に双方納得のいく面談を実施し、勧奨の言い方には注意を払うことをおすすめします。
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