【EVPとは?】Employee Value Proposition(従業員への価値提供)について解説!
EVPとは、会社が社員に提供できる価値のことです。
これまでは給料の高さや安定雇用に価値が見出されることが多かったですが、働き方の多様化に合わせて給料に加えてさまざまな要素が企業に期待されるようになりました。
今回は、EVPの概要や設定に至るまでの流れを解説します。
実際にEVP施策で成功している企業の事例もピックアップしますので、参考にしてみてください。
【EVPとは?】
EVP(=Employee Value Proposition)とは、「従業員への価値提供」のことを指します。
会社が社員に与える価値のことであり、近年は労働に対する最低限の報酬以上に何を与えられるか、という意味合いで活用されています。
EVPを増やすことができれば、その会社で働く意義を見出しやすくなります。
従業員のエンゲージメントやモチベーションが上がったり、求人応募の人数が増えるブランディング効果もあり、企業にとってもメリットがある取り組みです。
➢ EVPに注目が集まるようになった理由
EVPに注目が集まるようになった理由として、転職が前提の働き方が増えていることが挙げられます。
終身雇用制が事実上崩壊しており、ひとりひとりが理想とするキャリアプランやより好条件での雇用を目指して転職することが増えました。
「自分にとってメリットの多い会社に就きたい」と考える人が多くなり、EVPの多さを企業選びの基準に据えるようになったのです。
そのため、人手不足に悩む企業や優秀な人材を確保したい企業はEVP向上を意識するようになりました。
また、既存社員を長く確保するための取り組みとしてEVPをしている企業も多いです。
せっかく雇った人を早期退職させないために自社ならではの魅力を打ち出し、EVPとしてメリットを提供していることが分かります。
➢ 代表的なEVPの例
どんなEVPを向上させるかは企業により異なりますが、代表的な例として下記が挙げられます。
- 報酬(高い給与・賞与・手当金・インセンティブなど)
- 福利厚生(提携施設の提供・人間ドック費用補助・育児支援など)
- 休暇制度(法定以上の有給付与・リフレッシュ休暇制度など)
- 勤務体制の充実(テレワーク・サテライトオフィス勤務など)
- スキルアップサポート(セミナー参加費補助・書籍代補助など)
- ヘルスケアサポート(産業医面談・ハラスメント相談窓口など)
社員や求職者から何を期待されているのか、自社の強みをどうEVPとして還元していくかなどを考え、内容を考えていくことが重要です。
【EVPを設定するまでの流れ】
ここでは、EVPを設定するまでの流れを紹介します。
より効果的なEVPとして長期的にランニングさせるためにも、下記を参考にしてみましょう。
① EVPを設定する目的の可視化
まずは、何のためにEVPを設定するのか、目的意識やゴールを明確にしておく必要があります。
例えば雇っても雇っても社員が辞め続けてしまう会社の場合、エンゲージメントやモチベーションを育成するためのEVPが必要となってくるでしょう。
求人を出しても応募が集まらない会社の場合、対外的に見ても分かりやすいEVPを導入しアピール施策としていくことが効果的です。
目的によって導入すべきEVPの内容が変わることも多いため、最初に意識していくことが大切です。
② 組織サーベイによる自社課題のリストアップ
次に、組織サーベイによる自社課題のリストアップをおこないます。
代表的な手法として、社員アンケートのような形式で実施するセンサスサーベイが挙げられます。
経営層が想定していた課題と、現場の社員が感じている課題にズレが生じることは多いものです。
まずは現場にヒアリングすることを重視し、社員の本音を理解してみましょう。
③ EVPの決定・構築
課題が分かり次第、EVPの決定・構築に進みます。
例えば社員のモチベーションやエンゲージメントが高いにも関わらず、体調不良を抱えている人が多いと分かれば健康支援や休暇の取得に力を入れていくのがよいでしょう。
反対に体調面での問題はないもののモチベーションが低いと分かれば、給与・賞与など労働に対するインセンティブの部分もしくは社内における人間関係が整っていないことが想定されます。
自社の課題を解決するためにどんな施策が有効か考え、対策をしていくことが大切です。
理念・文化・風土などもともとの環境も反映しながら、今後の方向性を定めていきましょう。
④ EVPの周知・実行
EVPが決定し次第、周知・実行に移ります。
「社員にとってラッキーな施策」となるだけで終わらないよう、なぜEVPの充実を図るのか、会社側の狙いや思いも含めて広く周知していきましょう。
社内向けの周知をするなら社内イントラネット・社内SNS・社内報などを活用し、社外向けにも周知をするなら企業HP・公式SNS・プロモーションムービーなどによる発信も提供します。
社員側のメリットだけでなく企業側のメリットを高めるために、欠かせない取り組みです。
⑤ 効果測定・フィードバック・改善
EVPを実行した後は、PDCAサイクルを回すためにも効果測定・フィードバック・改善のフェーズに移ります。
「組織サーベイによる自社課題のリストアップ」の段階で社員アンケートをしている場合は、再度社員アンケートを取ってEVPがどの程度影響を与えているか測定してみるとよいでしょう。
組織のコンディション変化を定点観測することで、今後別のEVP施策に活かせる可能性もあります。
(ご参考:【パルスサーベイとは?導入する意味やメリットについて】)
【EVPに成功した企業事例】
最後に、EVPに成功した企業の事例をチェックしてみましょう。
業種・職種を問わず幅広くピックアップしますので、他社事例の研究をしたいときにお役立てください。
ソニー株式会社
ソニー株式会社では社員をステークホルダーの一員として位置づけており、社員に対する価値の提供に重きを置いています。
例えば、「Sony Outstanding Engineer Award」を開催して優秀な成績を上げたエンジニアを表彰する仕組みを作ったり、「Corporate Distinguished Engineer制度」による貢献度合いによる表彰制度を作ったりしています。
また、定期的に従業員エンゲージメント調査をしており、内容を研修やワークショップに活かしていることも特徴です。
(参考:ソニーグループポータル | テクノロジー | Activities)
積水化学工業株式会社
積水化学工業株式会社では、社員の健康習慣応援プログラムを提供しています。
2015年から始めた社員のメンタルヘルスケアをきっかけに健康経営に関する意識が強まり、現在では運動不足を解消するための社内ウォーキングイベントや健康サポートアプリ「七冠王アプリ」の提供をはじめました。
メンタルヘルス研修に参加するとポイントが付与され、ポイントを集めることで得になる仕組みをつくるなど社員ひとりひとりの意識づけをする取り組みもしています。
「すべての従業員がウェルビーイングであること」を目標にしているからこそ、健康に意識を向けていることが分かる取り組みです。
(参考:健康経営 – CSR – 積水化学工業)
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントでは、女性社員が出産・育児を経ても働き続けられる職場環境の改善を目指して「女性活躍促進制度 macalonパッケージ」を立ち上げました。
「ママ(mama)がサイバーエージェント(CA)で長く(long)働く」という意味を込められて作られた制度であり、女性特有の体調不良時に使える「エフ休」・妊活休暇・妊活コンシェルジュ・キッズ在宅勤務制度・認可祖語と保育園補助制度などを充実させています。
なかには保活情報の交換を目的とした、居住地の近いパパママ社員によるランチ会(おちか区ランチ)もあるなど、独走性のあるEVPとして注目されています。
株式会社ユナイテッドアローズ
株式会社ユナイテッドアローズでは、組織サーベイとして自社課題が浮き彫りになったことから、人事評価制度の改革に着手しています。
創業以来長く根付いてきている成果主義の考え方や目標管理制度はそのまま踏襲しつつ、評価と報酬の連動性を明確にして納得性を高める取り組みをしています。
また、タレントマネジメントシステムによる「適材適所」な人材配置や、360度評価による公平な人事評価を取り入れ、業務に対するモチベーション向上も狙っています。
組織サーベイの結果が行動に結びついた事例でもあり、「声をあげれば会社は応えてくれる」という心理的安全性の向上にも貢献しています。
(参考:従業員価値の創造 | サステナビリティ | UNITED ARROWS LTD.)
【まとめ】
EVPは、社員だけでなく会社のメリットも高い手法として知られるようになりました。
業種・企業規模問わず多数の会社がEVPを視野に入れた取り組みをしており、人材確保・社会的価値の創造に積極的であることが分かります。
FairWork surveyは、従業員エンゲージメントやモチベーションなど、組織のコンディションを可視化し、アラートを見逃さないための組織サーベイツールです。
EVP施策のきっかけを探るだけでなく、EVP導入後の効果測定にも役立つため、組織コンディションを定点観測したいときにお役立てください。
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