健康経営優良法人認定基準における睡眠支援の重要性について
健康経営優良法人として認定されるにはさまざまな基準をクリアしている必要がありますが、そのひとつに「睡眠支援」が含まれています。
慢性的な睡眠不足は、集中力の低下・肩や腰の痛み・遅刻につながりやすく、業務パフォーマンスも低下してしまうため注意しましょう。
個人的な努力不足で片づけられがちな項目ですが、残業・休日出勤の削減や十分なプライベート時間への配慮など、会社側ができることも意外と多いです。
今回は、健康経営優良法人認定基準における睡眠支援の重要性について解説します。
具体的にどのような施策が求められているのか知りたいときに、目を通してみましょう。
健康経営優良法人認定基準で問われること
健康経営優良法人に認定されるための審査では、生産性低下防止についての設問があるのであらかじめチェックしておきましょう。
特に、睡眠支援を含む下記のような課題について聞かれることが多いです。
- 睡眠不足による集中力低下
- 肩こり・腰痛など筋骨格系の諸症状
- 睡眠・食事・運動など規則正しい生活
上記の健康関連課題は、病気・怪我と違って直ちに業務に支障が出るとは限りません。
誰しもが個人的な夜更かしや繁忙期対応のため一時的な睡眠不足に陥ったことがあることを考えると、つい見逃してしまう課題でもあるでしょう。
しかし、慢性的な睡眠不足に陥った場合、「集中できずミスやクレームが増える」「生産性が低下して思うようなパフォーマンスを発揮できない」などのミスマッチが生じます。
場合によってはヒューマンエラーによる情報漏洩や桁を間違えた発注など、重篤なトラブルにつながることもあるため、個人の問題だからと一概に切り捨てることはできません。
健康リテラシーを上げるための取り組みや、万が一不調が出たときのサポートなど、会社側でもできる限りの努力が求められています。
具体的な睡眠支援の施策例
ここでは、睡眠支援に関する具体的な施策例を紹介します。
自社の課題に合わせて柔軟な施策にするのが一番ですが、何から手をつければいいかわからないときや、健康経営優良法人認定基準を確実にクリアしたいときは、下記を参考にしてみましょう。
リフレッシュルームや仮眠室を設置する
夜勤や長時間の勤務がある業態では、リフレッシュルームや仮眠室を設置するのが理想です。
例えば24時間出勤のうち休憩が8時間設けられている場合、誰でも手軽に使える仮眠室があった方がよいでしょう
なるべくプライバシーに配慮できるようカーテンやパーテーションでスペースが区切られていたり、女性用仮眠室と男性用仮眠室が分けられていたりすれば、休憩の質も高くなります。
定期的な換気・シーツ交換・落ち着いて寝られる程度の照明など、配慮するべきポイントに気を付ければ十分にリフレッシュできるのもポイント。
反対に、仮眠室と執務室が分けられておらず十分な休息が取れない場合や、仮眠室環境が悪くあまり眠れない場合は、睡眠不足を加速させてしまうので要注意です。
パワーナップなどの仮眠制度を導入している
パワーナップとは短時間の昼寝であり、社会心理学者ジェームズ・マース氏が提供したことで企業にも導入されるようになりました。
おおよそ12時から15時までの間に15~20分程度の仮眠時間を設けることでその後のパフォーマンス向上を狙う取り組みであり、「シエスタ制度」と呼ばれることもあります。
たった数十分の睡眠であっても、脳の疲労を取る効果やストレス緩和の効果が期待されているので、GoogleやNIKEなどの外資系企業では積極的に取り入れられています。
業務に支障が出ず、かつ自社にとって仮眠しやすいタイミングで実施できれば、午後のパフォーマンスを上げることができるでしょう。
睡眠に関するセミナーを実施している
睡眠の質を向上させるためのセミナーを実施し、自己啓発に努めてもらう方法もあります。
仮眠室やパワーナップの導入が現実的ではない企業でも取り入れやすく、自宅で手軽にできる睡眠対策など、生活の知恵を教えてもらえるのが特徴。
「寝るときに最適な部屋の明るさは?」「寝苦しい夏の夜にはどの程度エアコンを使うべき?」など、疑問に思ってはいるけれどわざわざ調べる程ではない…というコンテンツを積極的に発信すれば、睡眠に対する意識も変わっていくはず。
特に無意識のうちに睡眠不足に陥っている従業員には効果的な手法です。
SAS検査を実施、もしくは実施費用を負担している
SAS検査とは睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)についての検査であり、会社全体で検査を実施するか、もしくは自宅で手軽にできるSAS検査費用を負担するかで導入できます。
睡眠時に一時的とはいえ呼吸が止まってしまう症状なので熟睡できず、日中の眠気が強くなってしまうことが多いです。
脳が低酸素状態に陥りやすいため心臓に負荷もかかりやすく、高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中などのリスクが増すのもデメリット。
原因が睡眠時無呼吸症候群にあるとは気づかないまま重大な病気にかかったり、運転中や機材操作中の居眠りにつながったりする恐れもあります。
寝ている間の呼吸は意外と自分で気づくことができず、家族に指摘されてもなかなか正面から受け止められないもの。気づきを与えるためにも検査費用を負担するなどして導入し、睡眠の質と向き合ってもらう機会を設けましょう。
睡眠改善・睡眠管理に役立つアプリやツールを提供している
睡眠改善・睡眠管理に役立つアプリやツールを提供し、睡眠を見える化する方法もあります。例えば睡眠時間が長くなればなるほどスコアが高くなる、ゲーム性の高いアプリであれば楽しみながら導入できます。
睡眠の質向上に役立つコンテンツやワンポイントアドバイスを授けてくれるサービスであれば、移動中や休憩中にサッと目を通せるのもポイント。
いびきの録音、睡眠導入BGM、目覚ましアラームなどの機能が搭載されたアプリもあるので、賢く活用してみましょう。
月額利用料がかかる場合は会社が負担するなど工夫し、外部サービスを活用していくのも効果的です。
健康経営優良法人認定基準における睡眠支援に関する注意点
最後に、健康経営優良法人認定基準における睡眠支援に関する注意点を解説します。
対策する際に見落としがちなポイントに触れるので、参考にしてみましょう。
睡眠支援+αの施策が求められる
睡眠支援は健康経営に向けての重要な施策のひとつですが、睡眠支援だけで十分な生産性向上を狙えるとは限りません。
健康経営優良法人認定基準では、睡眠支援の他、下記のような施策も必要としています。
- 肩こり・腰痛など筋骨格系の諸症状に対する支援
- アルコール依存症に対する支援
- 花粉症に対する支援
- 眼精疲労に対する支援
- 女性特有の健康関連課題に対する支援
どれも一目では課題があると気づきにくい、生活習慣に即した課題であるとわかります。
「花粉症でだるいから集中できない」「生理痛が強くて座っているのもつらい」などの症状に悩まされた経験の
ある人にとっては、身近な話題ではないでしょうか。
個人の体質によるものと一刀両断されてしまいがちな課題ですが、会社としてできることがないか探っていく視点が求められています。
「評価項目不適合」を少なくするのがポイント
睡眠支援に限った項目ではありませんが、健康経営優良法人認定基準において、一部「評価項目不適合」と記されている部分があるのでチェックしておきましょう。
「睡眠支援を特に行っていない」「情報開示はしていない」などにチェックが入った場合、「評価項目不適合」とみなされます。
「評価項目不適合」になったからといって一発で不認定になるわけではなく、他の認定要件を満たせば認定を受けられる場合もありますが、なるべく数は少ない方がよいでしょう。
一方で、必須項目が不適合であった場合、一発で不認定になるため注意が必要です。
「健康経営の推進に関する全社方針を明文化していない」「健康経営推進の最高責任者が担当役員以下である」「データの提供について保険者に意思表示をしていない」など、重篤な項目にチェックが入った場合は不認定になってしまうため注意しましょう。
まとめ
健康経営優良法人として認定されるにはさまざまな取り組みが必要ですが、そのひとつに睡眠支援に関する内容も盛り込まれています。
慢性的な寝不足はときに重大なトラブルにつながるからこそ、個人の努力や我慢だけを強いるのではなく、会社を挙げて対策できるよう工夫していきましょう。
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