「就活うつ」は甘えなのか? 【代表的な症状と対処法】
仕事が原因で「うつ」になることがあることは広く知られるようになっていますが、就活が原因でうつ状態になる「就活うつ」も話題になっていることをご存知でしょうか。
「就活うつ」とは、就職活動を通してうつ状態などのメンタルヘルスに支障をきたすことを指し、若年層の就労意欲を削ぐものとして危険視されるようになりました。
今回は、就活うつの原因・症状・対処法について解説します。
(※「就活うつ」は医学用語ではなく、独立した診断基準もありません。)
「就活くらいでうつになるなんて甘えだ」と言われるケースもありますが、就活うつは甘えからくるものではありません。就活うつによる新入社員の早期離職を予防するため、企業側で行える対処策についてもご紹介しますので、ぜひ本記事をご活用ください。
【就活うつの原因とは】
まずは、就活うつの原因を解説します。これまで問題なく生活できていた人が、就活をきっかけに急に落ち込んでしまう理由を探り、対策に役立てていくことが大切です。
① 周りの就活生と比べてしまうから
就活をしていると、周りの学生と比べられる機会が多くなります。
集団面接で自分より快活な受け答えをしている学生や、グループディスカッションで周りを上手にリードしている学生と自分とを比較してしまい、落ち込むこともあるでしょう。
学歴・語学力・ビジネスに関する知見などで遅れを取っていると感じ、コンプレックスを抱くことも考えられます。
「自分はどの企業からも欲しがられないのではないか」という不安が常につきまとい、就活うつになる人も多いのです。
② 結果が伴わないから
なかなか面接に通過しない、いつも最終選考で落ちてしまう、内定が得られない…など結果が伴わず、就活うつに陥る学生がいます。いわゆる「お祈り」をされることが続くと、誰でも自信を失いやすくなるものです。
インターンシップ・合同企業説明会・自己分析・エントリーシートの作成・面接選考など内定を得るためにはさまざまな準備が必要ですが、それらの全てが意味のないものであるかのように感じ、徒労感を覚えることも少なくありません。
「これだけ頑張ったのにダメだった」と感じ、努力自体が無駄に思えてしまうこともあるでしょう。就活をする意欲自体をなくし、うつ状態に陥ることが考えられます。
③ 社会に出て働くイメージが持てないから
長く続いた学生生活が終わり、社会人として独り立ちする分岐点に立っている就活生は時に未来への強い不安を抱くことがあります。自分が社会に出て働くイメージが持てず、就活を怖がることもあるでしょう。
他の優秀な学生と比較することでよりこの傾向が強くなり、「自分なんかが活躍できる場があるわけない」と悲観的に考えやすくなります。
学校を出たばかりの学生に、最初から100%の働きを期待する企業はほぼありません。しかし、持って生まれた責任感や周りからの評価を気にする姿勢が仇となり、過剰な防護反応が出てしまうケースがあるのです。
【就活うつの代表的な症状】
次に、就活うつの代表的な症状を確認しましょう。うつ状態であることに気づかないケースもあるため、下記に当てはまる症状があれば要注意です。
➢ 頭痛・腹痛・吐き気など身体的な症状が出る
ストレスによる身体反応として、頭痛・腹痛・吐き気など、身体的な症状が出る可能性があります。また、耳鳴り・難聴・呼吸の乱れ・動悸・蕁麻疹などが出ることもあるでしょう。
ストレスの表れ方は人それぞれなので、風邪や持病としてストレスによる影響に気づけないこともしばしばです。
就活うつが長引くと就職後にも影響が残り、せっかく入社した会社を早期退職せざるを得ないケースも出てきます。
➢ 食欲不振・暴飲暴食・不眠・過眠など生活習慣を壊す
食欲がなくなったり、反対にストレスから暴飲暴食に走ったりすることがあります。また、なかなか眠れない入眠困難、眠っても途中で目覚めてしまう中途覚醒が見られるケースも少なくありません。
感情の幅が大きくなる・反対に感情の起伏が乏しくなる・好きだった趣味に興味が持てなくなる・布団から起き上がれなくなる・少し動いただけで疲れやすくなるなど、日常生活に支障が出ることもあるでしょう。
就活うつが原因で家族や友人との関係性にヒビが入ることも多く、孤立しやすいこともデメリットです。
➢ 就活に対する意欲を失って内定を得ないまま、ひきこもりになる
就職・就労に対する意欲がどんどんなくなってしまい、就活に熱が入らなくなってしまいます。そのまま就活を続けていても内定が得られず、卒業を迎えてしまうこともあるでしょう。
「内定が得られていない」ということが更にコンプレックスとしてのしかかり、自信を喪失してしまうケースもあります。既卒として就活するエネルギーもなくなり、そのままひきこもり状態になってしまう方もいらっしゃいます。
➢ 自分の将来が見通せず自暴自棄な行動に出る
就活を通して将来のビジョンを見通すことができず、自暴自棄な行動に出ることもあります。
周りの人に激しく当たり散らして友人をなくしたり、せっかく最終面接までこぎつけた選考当日に連絡もなく欠席したりする可能性が出てきます。なかには就活自体を諦め、半ニート生活をしたり旅に出たりすることも考えられるでしょう。
目的を持って旅に出るのであれば問題ありませんが、自暴自棄になった結果であれば後になって後悔する可能性もあります。結果として得るものが少なく、職歴に穴を開ける結果にもなりかねません。
➢ 内定辞退・早期退職など
就活うつを抱えながら無事内定を得たとしても、入社後に頑張れるビジョンが持てず、悲観的になって内定を辞退してしまうケースも出ています。
また、とりあえず入社はしたものの、体調を崩したまま働いているため十分な評価がされず、結果として早期退職やメンタル不調による休職に至ることもあるでしょう。
本人はもちろん採用した企業にとってもマイナスの結果であり、双方のミスマッチは避けられません。就活うつを抱えている新入社員がいれば、早期の段階で手を打つことが大切です。
【就活うつに対する企業の対処策】
最後に、就活うつに対する企業の対処法を紹介します。根本的に就活うつを防ぐためにも、就活うつを抱えた新入社員を採用してミスマッチにならないためにも、下記を参考に対策していきましょう。
①リファラル採用やダイレクトリクルーティングなど採用手法を見直す
既存社員からの紹介を元に採用する「リファラル採用」や、優れた人材へ個別に声かけをする「ダイレクトリクルーティング」など、採用手法を見直す方法があります。
こうした採用手法は個別でのスカウトが前提となるため、「他ではない自分が求められている」という自意識を育みやすくなるでしょう。
会社から寄せられている期待に応えようとする貢献心も育ち、エンゲージメントの向上につながります。そのため、入社したその日から高いモチベーションで業務に当たってもらうことも可能です。「大勢のうちのひとりである」というネガティブな意識を払拭させるひとつの手法として、検討してみましょう。
②内定者懇親会や職場見学会などを開催する
内定者懇親会や職場見学会など、内定者を対象としたコミュニケーションの機会を多めに設けることが効果的です。
最初は就労に対する意欲が欠けていても、就職先の姿や現場で働く先輩社員を見ているうちに働いている自分が想像できるようになります。「自分でも活躍できそう」「頑張って少しでも会社に貢献したい」という前向きなモチベーションを喚起しやすく、意欲向上に効果が現れます。
また、学校・サークル・アルバイトなど既存のコミュニティではない場に属することで、新たな価値観が生まれることもあるでしょう。内定者同士で情報交換しているうちに自分の意識も引き上げられるなど、多くのメリットが得られます。
③新入社員のモチベーションを可視化してサポートする
内定者や新入社員のモチベーションを定期的に可視化し、意欲が下がっている人・悩みや体調不良を抱えている人を早期発見する手法もあります。悩みを抱えていると分かれば、早期の段階でサポートすることが可能です。
入社する前に心配事や不安をヒアリングしたり会社の思いや今後の成長戦略を共有したりすることは、働く意欲の向上に貢献します。また、「手厚くサポートしてもらえている」と実感してもらえれば会社に対する愛着心も生まれていくでしょう。
社員の体調やモチベーションを可視化するためには、月に1回など定期的に簡易なアンケートを実施し、不調をきたしそうな社員を早期に見つけて対応するパルスサーベイが有効です。
【まとめ】
就活うつは、本人だけでなく家族や企業にも大きな影響を与える問題です。学生を歓迎する雰囲気を作って採用・育成していくことで、就活に悩む学生を減らすことができるかもしれません。
パルスサーベイは、新入社員や中途入社社員の体調やモチベーションを定点観測し可視化することができます。
「新入社員が早期に体調不良になることを予防したい」、「入社時研修の効果測定がしたい」など、データに基づいた組織改善施策を打つ際には、ぜひ導入するのが良いでしょう。
フェアワークでは、ストレスチェックや従業員サーベイ、不調者を早期に発見して適切な支援を届けるための相談窓口など、企業文化に合わせた効果的なメンタル不調予防策をご支援しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。