【自己保健義務とは?】安全配慮義務との違いや、判例について

【自己保健義務とは?】安全配慮義務との違いや、実際の判例について

従業員が安心・安全に働ける職場環境を作るため、安全配慮義務について考える企業担当者は多いでしょう。

しかし、安心・安全な職場環境づくりには、企業側だけでなく従業員側の協力も欠かせないのです。

今回は、従業員に課せられた自己保健義務について解説します。

安全配慮義務との違いや実際の判例にも触れるため、ぜひチェックしてみてください。

目次

【安全配慮義務および自己保健義務について】

まずは、安全配慮義務自己保健義務の概要を確認していきましょう。

➢ 安全配慮義務とは?

安全配慮義務とは、企業に義務化されている「従業員が心身ともに健康かつ安全に働けるための配慮」のことです。

2008年に施行された労働契約法第5条に盛り込まれている内容であり「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められました。

ヘルメットや安全帯の着用徹底・車両運転前のアルコールチェック・夏場の適切な冷房稼働など、労災の予防には当然企業側の努力が欠かせません。

また、健康診断やストレスチェックの実施・長時間労働の是正・ハラスメント対策研修など、健康管理やメンタルヘルスに関する役割にも注目が集まっています。

➢ 自己保健義務とは?

自己保健義務とは、従業員に義務化されている「心身ともに健康かつ安全に働くための配慮」のことです。

例えば、企業が実施する健康管理措置に対し、協力的な姿勢を見せる必要があります。

ヘルメットの着用やアルコールチェックを拒めば、当然安全な職場環境は作れません。

また、健康診断やストレスチェックの受診を拒否すれば、企業側からの適切なサポートもできないでしょう。

つまり、自らが健康に業務に従事できるよう、できる限りのことをする義務だと言えるのです。

【自己保健義務の内容】

自己保健義務の内容

下記では、自己保健義務に関する具体的な内容を解説します。

どこまで義務とされているか知るためにも、目を通してみましょう。

①健康診断受診義務

労働安全衛生規則第66条5項には、「健康診断の受診義務」が明記されています。

「労働者は、前各項の規定により事業者が行う健康診断を受けなければならない」と記載されており、基本的に健康診断を拒むことはできません。

一方、「事業者の指定した医師又は歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りではない」とされています。

必ずしも会社が指定する健康診断を受けなければいけないわけでなく、診断項目が法定に則ってさえいれば他の医師に健康診断を依頼することもできるのです。

どちらの場合でも健康診断結果は会社に提出する必要があるため、併せて覚えておきましょう。

②自覚症状の申告義務

第44条において、健康診断における「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」が課せられています。

つまり、体調面での自覚症状があれば正直に医師に相談することが義務づけられているのです。

「就労に不利になりそうだから」と無理に自覚症状を隠したり、偽って答えたりすることは自己保健義務違反だと分かります。

自覚症状は、本人から申告がなければなかなか気づくことができません。

企業が産業医と連携して早めに適切な配慮をするためにも、自覚症状を申告することは非常に重要です。

③私生活上の健康管理義務

労働安全衛生規則第66条7項には「保健指導後の健康管理義務」が、第69条2項には「健康の保持増進義務」が明記されています。

健康診断の結果や保健指導を利用し、従業員自らが自分の健康保持・増進に努めることを義務付けた項目だと言えるでしょう。

例えば、肥満・高血圧が指摘された場合は適度な運動習慣をつけたり、呼吸器疾患がある場合は禁煙・減煙に努めたりする対策が挙げられます。

栄養バランス・睡眠時間・飲酒量など生活習慣を見直したり、可能な限りのセルフメンタルケアを導入したりすることも有効です。

健康は職場だけで保持するものではなく、私生活における管理も重要です。

業務中に高いパフォーマンスを発揮するためにも、プライベートを管理するよう意識していきましょう。

④健康管理措置への協力義務

企業が実施する健康管理措置に対し、協力することも重要です。

企業側が定めるルールを守る・安全衛生委員会へ積極的に参加する・勤務内外を問わず健康増進に努めるなど、さまざまな協力手法が挙げられます。

従業員が積極的に協力しなければ、本当の意味で職場の安全が叶うことはないでしょう。

安全配慮義務は従業員のためのものであると理解し、自らのためにも協力する意思が欠かせません。

⑤療養専念義務

労働契約法第3条4項には、「労働契約上の信義則」が存在します。

怪我や病気のために欠勤・休職している場合、従業員は療養に専念しなければなりません。

通院・服薬を怠ったり、わざと体調を悪化させるような行為を繰り返す場合、自己保健義務違反とみなされることがあるでしょう。

プライベートの時間をどう過ごすか会社側が強制することはできないものの、明らかに傷病の回復が目的でない行動が見られる場合は要注意です。

【自己保健義務を周知・徹底させるには】

自己保健義務を周知・徹底させるには

自己保健義務は、従業員に周知・徹底させることが大切です。

企業として安全配慮義務も十分に満たしつつ、自己保健義務についても周知できればより安心・安全な職場環境づくりが叶うでしょう。

下記では、従業員向けの施策について解説します。

➢ 就業規則の整備・周知

就業規則は社内のルールを明文化するためのものであり、健康に関する項目を盛り込んでも問題ありません。

医師から指示・指導を受けた場合の動きや、健康状態に異常があった場合の報告フローなどを明記しておくとよいでしょう。

また、健康診断・ストレスチェックの実施について加えておくことも効果的です。

就業規則は誰でもいつでも閲覧できるよう、グループウェアや共有フォルダに格納しておきます。

全体研修の場や健康診断が近づいたタイミングなどに繰り返し周知し、研修・教育にも役立てていきましょう。

➢ パルスサーベイを用いて自己を見直す機会をつくる

自分自身の健康状態を振り返ることは、ふつうは難しいものです。

「問題なく健康である」と思っていても健康診断で意外な項目が指摘されたり、気づかないうちにストレスを溜め込んでいたりすることも少なくありません。

自己を見直す機会のひとつとして、パルスサーベイが挙げられます。

パルスサーベイはアンケートに答えるような気軽な形式でコンディションを把握できるツールであり、自分でも気づきにくい指標を可視化できます。

特に、欠勤・休職には至らないものの慢性的な体調不良を抱えている「プレゼンティーズム」の把握に役立つでしょう。

睡眠不足や二日酔いなど一時的な体調不良の頻度も見られるため、効果的です。

【まとめ】

安心・安全な職場づくりには、企業側だけでなく従業員側の協力も欠かせません。

安全配慮義務だけでなく自己保健義務があることを知り、周知していきましょう。

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組織だけでなく個人単位でのコンディションも把握したいときに、ぜひお役立てください。

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