【インフォデミック対策】社員のヘルスリテラシーを高めてリスク回避
インターネットによる情報収集が主流になった昨今、公的機関や専門家によって発信された情報と、内容に疑いのある情報とを見極めるリテラシースキルが問われるようになっています。
特に近年猛威を奮う新型コロナウイルスの流行に伴い、信憑性の薄い情報を信じてしまうケースも増えました。
今回は、情報化社会におけるインフォデミックについて解説します。
ヘルスリテラシー向上が企業の生産性にどう影響するのかにも触れるため、新たな社員教育を試みたい場合にご参考ください。
【インフォデミックとは】
インフォデミックとは、出どころの分からない不確かな情報が爆発的に拡散・蔓延することです。
「インフォメーション(=情報)」と「パンデミック(=流行)」を掛け合わせた造語であり、特にSNSや動画投稿サイトによる誤った情報拡散が主体となっています。
インフォデミックという言葉が台頭したのはごく最近であり、新型コロナウイルス関連の根も葉もない噂が広がっていることに対してWHO(世界保健機関)が「インフォデミックである」という言葉を使用したことが発端です。
日本だけでなく世界的な問題であり、早急な対応が必要だと言えるでしょう。
【インフォデミックが企業活動に与える影響】
インフォデミックは個人が正しい情報リテラシーを持つことで防げるとされているものの、情報の拡散・蔓延にリテラシー教育が追いついていないのが現状です。
事実、情報に踊らされて仕事や家庭生活に影響が出ている人も多く、企業単位の深刻な悩みとして根付くケースも少なくありません。
下記では、インフォデミックが企業活動に与える代表的な影響を紹介します。
➢ コロナ不安による出社拒否
新型コロナウイルスの感染予防には、なるべくステイホームによる自粛を心がけて人との対面接触を減らすことが有効とされています。
とはいえ出勤などやむを得ない事情により外出しなくてはいけない人は多く、完全にテレワークへ移行できない職種もあることから、自粛は強制されていません。
しかし、なかには出勤による感染リスクを過剰に恐れ、出社拒否してしまう社員も存在します。
テレワーク対象の職種ではないのにテレワークを要望したり、出勤手当の加算を望んできたり、会社として対応に困ることもあるでしょう。
労務トラブルに発展するケースも多く、退職・休職・休業中の給与を巡って労働審判に発展する可能性が出てきます。
コロナ禍であるからこそ社員が一致団結したい状況でありながら、インフォデミックが協働を阻害することが多いと言えるでしょう。
➢ 消毒・マスク着用の強要によるトラブルや人間関係の悪化
新型コロナウイルスの流行に伴い、適切な手洗い・うがい・手指消毒・マスクの着用が欠かせなくなりつつあります。
消毒のタイミングや推奨するマスクの素材について会社が指示する場合も多く、クラスター発生に伴う業務停止リスクを予防する手法として有効です。
しかし、ときにはオフィスで席が近い同僚や出入りする取引業者の感染症対策が気になってつい口を出してしまい、トラブルに発展するケースも少なくありません。
上司の指導を超えて社員同士が監視しあうような雰囲気が生まれるなど、職場の空気が悪くなる可能性もあります。
社内コミュニケーションが阻害されて業務に支障が出ないよう、対策が肝心です。
➢ 感染者・クラスター発生に関する内部情報の漏洩
感染者やクラスターの発生は無理に社外秘とせず、情報を公開しながら無理のない範囲で経営を続ける企業が多くなっています。
しかし、会社からの正式なアナウンスとして公開する前に内部情報が漏れてしまったり、根も葉もない噂となって一人歩きしてしまったりするケースもあるでしょう。
「〇〇部署の△△さんがコロナを流行らせた」
「うちの会社はコロナの影響で倒産間近らしい」
などの情報が出回り、社内外共に大きな不安を与えかねません。
コンプライアンスや就業規則に違反するリスクにもなるため、注意したい項目です。
➢ 社名を騙った振り込め詐欺・フィッシング詐欺
新型コロナウイルスを不安視する人を狙い、振り込め詐欺やフィッシング詐欺が多発しています。
勝手に社名を騙られて「〇〇社も使用している」「〇〇社開発の」と枕詞がつけられてしまうケースも出ており、詐欺に加担しているような印象が根付いてしまいます。
その後第三者による勝手な社名利用であることが発覚したとしても、傷ついたブランドイメージを完全に修復することは難しいでしょう。
些細なことがきっかけとなり、顧客離れが起こることも考えられます。
コロナ禍で売上が低迷している企業が多いなか、更にダメージを与えられる可能性もあるのです。
【インフォデミックを防ぐ方法3選】
インフォデミックを防ぐためには個々人が高い情報リテラシーを持つことが大切ですが、企業単位の対策が功を奏することもあります。
ここでは企業としてのインフォデミックリスクを低減する方法を紹介するため、参考にしてみましょう。
① 自社の業態が関連する情報を積極的に発信する
病院が正しい疾病の予防法を繰り返しアナウンスしていたり、大学や研究機関が最新情報を分かりやすく伝えようとしていたりすることを受け、企業による情報発信にも注目が集まっています。
過去には民間企業がインフォデミックを防いだ事例もあり、「トイレットペーパーがスーパーから消える」というデマに対し丸富製紙株式会社が在庫を画像で示しながら「購入を急ぐ必要はありません」と伝えたことは記憶にも新しい出来事ではないでしょうか。
デマを収束に導いたとして、丸富製紙はジャパン・デジタル・コミュニケーションアワード大賞を受賞するほか、2020年のエンゲージメントボリュームランキングでも初めてランクインしています。
この事例からも分かる通り、自社の業態が関連する情報について積極的に発信していくことは企業としての信頼性にも貢献します。
デマや根も葉もない噂には毅然と対応する姿を貫くことで、社員・取引先・顧客から改めて信頼を得ることができます。
② ヘルスリテラシー研修を実施する
ヘルスリテラシー研修とは、自分に合った健康情報を入手・活用することでQOLを向上させるための研修です。
生活習慣病・メンタルヘルスなど日常に隠れる根深い疾病の予防はもちろん、癌や大きな怪我に備えたライフプランづくりなど、テーマは多岐に渡ります。
そもそも「健康に関する正しい情報はどこから仕入れればいいか」「困ったときに誰に相談すればいいか」など、ヘルスリテラシーの根本を問う研修をしてもよいでしょう。
コロナウイルスワクチンや感染予防法に関する情報を学び、怪しい健康食品や団体に加担しないよう配慮する意味合いもあります。
自社の社員が健康不安を持つことなくのびのび働けるよう、健康経営の視点も加えて実施してみることをおすすめします。
③ プレゼンティーズムな社員の割合を調べてサポートする
インフォデミックに踊られている社員のなかには、健康を守るために過剰な防衛をしている人もいるでしょう。
ストレスや不安が溜まってイライラしたり却って体調を崩したりするケースも多く、出勤こそしているもののパフォーマンスが上がらない可能性が出てきます。
こうした社員は「プレゼンティーズム」を抱えた状態にあるといえるため、早い段階で企業側が気づき、対処することが肝心です。
個別でミーティングの時間を取ったり就業上の配慮ができたりすれば、双方にとってメリットの高い労働環境を確保しやすくなります。
まずはプレゼンティーズムを抱えた社員がいるかを調査し、対象を絞り込んでいくことが第一歩です。
健康問題は非常にセンシティブな話題であることから直接上司に相談しづらいと考える社員も一定数いるため、ヘルプを出すハードルを下げる組織サーベイなどの実施も有効でしょう。
【まとめ】
インフォデミックはまだ生まれて間もない言葉ですが、情報の混乱を広げるとして大きな社会問題になりつつあります。
特に新型コロナウイルスのような未知の疾病が流行したときや台風・地震・水害など天災が発生したときはインフォデミックが起こりやすいと言われており、正確な情報を知っている人の数が少ないことも相まってより混乱することが予想されるでしょう。
インフォデミックによる企業リスクを防ぐためには、社員ひとりひとりの情報リテラシーを見直すことが大切です。
特に健康分野に関するヘルスリテラシーを持つことは業務パフォーマンスにも直結するため、対策しておいて損はないでしょう。
FairWork surveyは、社員の健康状態を可視化できるツールです。
プレゼンティーズムを抱える社員がいないか、幸福度・エンゲージメント・モチベーションの高低など、組織のパフォーマンスにつながるさまざまな項目をチェックできるため、健康経営の指標としてご活用ください。
Fairworkでは、精神科医・公認心理師をはじめとする専門家チームが健康経営の推進をご支援いたします。
産業医契約、ストレスチェックや、ストレス対策セミナーまで、まずはお気軽にお問合せください。