【キャリア自律とは?】企業のメリットと事例について解説
キャリア自律とは、個人が自分のキャリアについて自発的に考え、向上心を持って努力している状態のことを指します。
近年はキャリア自律を促進する企業が多くなり、「どんな人材に育ってほしいか」という企業側の視点ではなく「どんな人材として成長したいか」という働く側の視点が重視されるようになっています。
今回は、キャリア自律を促進することによる企業側のメリットについて解説します。
実際にキャリア自律の促進に成功した企業事例もピックアップしますので、参考にしてみましょう。
【キャリア自律の必要性が高まっている理由】
近年キャリア自律の必要性が高まっている要因として、働き方や人事評価制度の方法が変わっていることが挙げられます。
どのような要因が影響しているのか、詳しく確認してみましょう。
① 終身雇用制度が崩壊しつつあるから
キャリア自律は、終身雇用制度の崩壊に合わせて必要性が高まるようになりました。
ひと昔前の日本では終身雇用制度が主流であったため、会社に就職したら定年まで転職せず働き続けることが前提となっていました。
しかし近年は高待遇ややりがいを求めて転職する人が増え、定年まで同じ会社で務めあげる人の方が珍しくなっています。
グローバル人材の登用やジョブ型雇用など新しい採用形態も現れており、優秀な人材が自社にずっと在籍し続ける保証がなくなったのです。
そのため、企業が長い目線でキャリア教育を実施する意味合いが薄れてきています。
サラリーマンとして働く40年を見据えてキャリア教育をするよりも、キャリア自律型の人材を積極的に採用し自走力に期待した方がよいとする見方が広がり、キャリア自律のニーズが高まってきているのです。
② 能力主義を前提としたキャリアパスが増えているから
年功序列型の人事評価制度が少なくなり、能力主義を前提としたキャリアパスが増えていることもキャリア自律のニーズ向上に影響しています。
能力主義による人事評価制度では年齢・学歴・経験に関係なく実績次第でどこまでも上を目指せます。
より昇進・昇給を目指す人は若手であっても徹底した努力をおこない、反対に生活に不便しない程度の給料がもらえていればいいと考える人はそこそこの努力に留まるようになっています。
つまり、人によって目指すキャリアパスが異なるようになったことで、企業側による一辺倒なキャリア教育が通用しなくなったのです。
本人の意思に任せてキャリアパスを共有する方が、企業にとっても社員にとってもメリットがある時代に突入しつつあると分かります。
③ 自発的な努力をする人材が求められているから
少子高齢化による労働人口減少が叫ばれている昨今、企業が長い目で人材育成をする余裕がなくなりつつあります。
採用・育成コストを削減するため自発的な努力をするキャリア自律型の人材が求められるようになり、採用市場も企業側のニーズに合わせて変化するようになりました。
実際の採用市場でも「弊社ではこんな人材を欲しているがあなたに適性はありますか?」と聞く企業主体の面接ではなく、「あなたは弊社でどんなことがしたいですか?」という本人主体の面接スタイルが多くなっています。
キャリアについて自己分析する人材も増え、双方の理想を照らし合わせた相談型の採用が増えていると言えるでしょう。
就活・転職市場問わずキャリア自律型の人材が増えている理由が分かります。
キャリア自律を促進する企業側のメリット
キャリア自律を促進することで、企業が得られるメリットが数多く存在します。
ここでは、企業側のメリットについて深堀りしていきましょう。
① 効率のよいスキルアップを促せる
社員が望むキャリパスが分かっていれば、企業側から効率よくスキルアップを促せます。
例えばスキルアップを望むエンジニアやプログラマーが多い企業であれば、セミナー・勉強会・講演会の参加費用を補助する施策を打ち出せます。
副業による収入アップや柔軟な働き方を望む声が多い企業であれば、社内副業制度を導入して人事査定・賞与査定の方針を見直してみてもよいでしょう。
会社からの一方的なキャリア教育だけでは、社員のニーズとズレが生じる可能性があります。
社員のニーズに合わせて会社を柔軟に変えていけば、効率のよいスキルアップが期待できるようになるのです。
② 優秀な人材を発掘・育成できる
キャリア自律型の人材は、自分の理想を叶えるために必要な努力を自分自身で選び取ることができます。
会社が無理に主導せずとも自発的な努力を促進しやすく、その分優秀な人材を発掘しやすくなるでしょう。
前述した効率のよいスキルアップ促進と合わせれば、社員の能力を引き出すこともできるでしょう。
人材の発掘・育成を重視する企業ほど、キャリア自律型の人材を重宝した方がよいと分かります。
③ 社内公募制度導入によるモチベーションアップが期待できる
キャリア自律の人材は、社内公募制度・社内立候補制度などと相性がよいとされています。
自分が経験したい業務や目指すキャリアに合わせて社員自ら部署を選択する制度であり、認められればモチベーションが高まるでしょう。
「この会社にいれば確実にキャリアアップできる」という安心感も高まり、離職率も低下します。
キャリア自律を助ける取り組みをしていくことで、モチベーションやパフォーマンスが上がる効果が期待できるのです。
④ 会社と本人の理想が合致していればエンゲージメントが上がる
会社が目指す方針と社員が理想とするキャリアパスが合致していれば、社員のエンゲージメントが上がります。
1on1ミーティングなどの場で定期的なすり合わせをおこなえばよりエンゲージメントを挙げやすく、モチベーションもパフォーマンスも向上するきっかけとなるでしょう。
そのため、社員の理想をヒアリングするだけでなく、会社側の期待や狙いも共有していくことが重要です。
「この会社だからこそ働きたい」と感じてもらうことができれば、誰にとってもメリットの高い施策となるでしょう。
【キャリア自律の促進に成功した企業事例】
ここからは、実際にキャリア自律の促進に成功した企業の事例を紹介します。
会社ごとに異なる施策をチェックし、自社と照らし合わせながら参考にしてみましょう。
➢ NTTテクノクロス株式会社|選択型研修の実施
NTTテクノクロス株式会社では、2017年の合併を機に「選択型研修」を導入しています。
多数のテーマに基づく研修を開催し、社員の興味・関心に合わせて参加する研修を自由に選んでもらうシステムを作りました。
これまでは一般的なビジネススキル研修や階層・部署・役職別の研修のみを実施しており、参加者が「いつものメンバー」に偏ってしまうことが課題となっていました。
しかし選択型研修をしたことで参加者のステータスがちょうどよく分散し、社内コミュニケーションの活性化につながっています。
また、自分の興味・関心・スキルレベルに合わせた研修に参加できるため、自然とモチベーションが上がったという結果も得られるようになりました。
「自分にはどんな研修が必要か」を考えるきっかけとなった取り組みであり、キャリア自律を助けてる事例だと分かります。
➢ 株式会社デンソー|自律学習を助けるオンライン研修の実施
株式会社デンソーでは、自律学習を助けるオンライン研修を実施しています。
当初は集合型の一斉研修のみを実施していましたが、新型コロナウイルスの流行に伴って大人数での集合研修を避けたいとする考えからオンラインに移行しています。
自律学習を助ける取り組みとして、実践と研修を往復しながら学ぶ「フィールドワーク型研修」と、参加者同士の意見交換を主体とする「相互学習型研修」を導入しました。
行動につながる実践的な学びが得られるほか、社内における自分の立ち位置や今後のキャリアパスについて考えるきっかけにもなったという声が大きく、受講者アンケートの結果もよいものとなりました。
高い主体性を発揮しながら自発的に学び続ける、キャリア自律型の人材育成に役立っています。
【まとめ】
キャリア自律によって得られるメリットは、企業にとっても社員にとっても大きなものとなります。
自分自身のキャリアを見据えて努力しようとする社員を支える仕組みづくりができれば、エンゲージメントやモチベーションの向上に役立つでしょう。
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