メンタルヘルスに関する社内相談窓口について【企業の設置義務は?】
職場で感じる様々なストレスに対処するためには、1人で抱えずに誰かへ相談することが大事になります。
しかし、「明確な症状や困りごとがないのに病院に行くのは気が引ける」「上司には相談しづらい内容なので社内で解決しづらい」と感じることもあるでしょう。そんなときは社内の相談窓口を活用し、解決の糸口を探ることが役に立ちます。
今回は、メンタルヘルスに関する社内相談窓口について解説します。企業の設置義務や設置のメリットにも触れるので、参考にしてみましょう。
メンタルヘルスに関する社内相談窓口が求められる背景
厚生労働省は、労働省のメンタルヘルス対策を推進するため2006年に「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定しています。
メンタル不調を理由とした休職・退職予防に加え、全ての労働者がウェルビーイングな状態で働ける社会づくりを目指して策定されたものであり、4つのケアと3つの予防の重要性を説いています。
このなかでメンタルヘルスに関する社内相談窓口にも触れられており、社内の制度に詳しく、かつ直属の上司ではない第三者に相談できる場の重要性が再注目されました。(⇒ 「4つのケア」と「3つの予防」に関するまとめ資料をダウンロード)
メンタルヘルスに関する社内相談窓口の設置状況
次に、メンタルヘルスに関する社内相談窓口の設置状況について解説します。
➢ 社内相談窓口の設置義務はない
メンタルヘルスに関する社内相談窓口は、健康診断やストレスチェックの実施とは異なり、義務ではありません。
つまり、メンタルヘルスに関する社内相談窓口がないからといって罰則の対象となったり、労働基準監督署からの監査を受けたりするリスクはないので安心してよいでしょう。
一方で、社内相談窓口を設置するのが望ましいのは事実です。
特に従業員数の多い企業は経営層・人事・総務など本社機能から現場が見えなくなりやすく、関知できない場所でハラスメントが横行しているケースもあるので注意しておきましょう。
従業員がいつでも安心して相談できる場を担保する意味でも、相談窓口の設置を検討してみましょう。
➢ 企業のメンタルヘルス対策としても設置率はまだ低い
平成30年の厚生労働省調査によると、「メンタルヘルス対策に取り組んでいる」と回答した企業のなかでも、「メンタルヘルスに関する社内相談窓口を設置している」とした企業は50.1%に留まっています。従業員数が50人以上の事業場に絞って調査すると、その割合は約45%にまで下がり、まだまだ設置率が低い現状が読み取れます。
近年はテレワークやサテライトオフィス勤務の広がりに伴い、社内コミュニケーションが希薄になる企業も増えました。従来であれば、上司が部下の不調に気づき相談に応じる(ラインによるケア)ことができたものが、以前よりも難しくなっているのが現況です。
従業員のメンタルヘルスケアが手薄になりやすい時代だからこそ、いつでも自身や部下の不調について専門家に相談できる社内相談窓口の整備が、以前にも増して求められています。
メンタルヘルスに関する社内相談窓口設置時の注意点
メンタルヘルスに関する社内相談窓口を設置する際は、下記のポイントに注意しましょう。目的から逸れた利用となったり、形骸化したりするのを防ぐためにも下記の注意点を押さえることが大切です。
設置の意義・目的・利用シーンなどを正しく社内広報する
まずは、メンタルヘルスに関する社内相談窓口を設置する意義について、正しく社内広報します。
自社の何に課題を感じ、なぜ導入するに至ったか、経営者や人事などの言葉で伝えていきましょう。
また、利用することでどのようなサポートが得られるのか、メリットを伝えることも重要です。
具体的な利用シーンや相談内容も加えながら広報することで、「気軽に使えそう」「何でも相談していい場所」など親しみやすさを感じてもらうことができます。
形骸化しない定期的な呼びかけや改善を図る
メンタルヘルスに関する社内相談窓口は、設置することがゴールではありません。利用してもらい、かつ適切なサポートを提供することで早い段階でメンタル不調を防いだり、従業員満足度を向上させることが目的です。
「設置したはいいが利用者がいない」ということのないよう、定期的かつ頻繁に社内広報しながら利用を呼びかけましょう。月に一度の社内報や、ストレスチェックの案内メールなど、折に触れて社内相談窓口の情報やストレスに対処することの重要性を呼びかけましょう。
また、「相談したのに具体的な解決策を提示してもらえなかった」という感想を抱いてしまうと、従業員にとってメリットのある取り組みではなくなります。相談窓口を担当する臨床心理士などの専門職とは定期的に打ち合わせを行い、社内の実情を共有したり環境調整のための改善策を検討することが望ましいでしょう。
社内相談窓口の活用事例
最後に、社内相談窓口の活用事例を紹介します。他社でどのような活用をしているかチェックし、自社にも参考になりそうなポイントがないか探っていきましょう。
Yahoo!株式会社
Yahoo!株式会社では、「こころとからだの健康相談窓口」を設置しています。
担当制による細かなサポートを心がけ、傾聴力を重視した親身なサポートを提供するようになりました。
寄せられた相談は本人の同意を得た後に安全衛生委員会で共有するなど、ノウハウの蓄積・サポートの充実に向けて工夫しているのも特徴です。提携医療法人があり、いざというときすぐに専門家に相談できることも大きなメリットと言えるでしょう。
株式会社ジェイアール西日本メンテック
株式会社ジェイアール西日本メンテックでは、2010年から社外のカウンセラーと提携し、社外カウンセリングサービスを開始しました。
気軽に専門家のアドバイスを受けられるようになり、社内では相談しづらいことにも柔軟に対応できるようになっています。同時に、もともと社内に設置してあったハラスメント相談窓口とメンタルヘルス相談窓口と一本化し、「ハラスメントが原因でメンタルヘルスを悪化させた」などの悩みにも対応できるよう工夫しています。
従業員が産業カウンセラー資格を取得するのも積極的に支援し、クオリティ向上も視野にいれているのがポイントです。
株式会社サッポロドラッグストアー
株式会社サッポロドラッグストアーでは、ハラスメント窓口と内部通報窓口を設置しています。
それに加えてメンタルヘルス関連の相談窓口も新設し、人事部内に専用回線を設けるようになりました。
全従業員が携帯しているハンドブック・採用向けパンフレット・社内イントラネットなどに相談窓口について掲載するなど積極的な社内広報をおこない、利用率も少しずつ上がっています。
「気軽に連絡できる身近な相談窓口」として機能した事例と言えるでしょう。
まとめ
1日の大半を過ごすことになる職場では、人間環境のストレス・業務のストレス・職場環境のストレスなどが生じます。ひとつひとつは小さなストレスでも、うまく対処することができないままいると、重篤なメンタル不調によって就業不能になる要因となってしまうため注意しておきましょう。
従業員のメンタル不調を早期に予防するためにも、また従業員満足度を高めるためにも、メンタルヘルスに関する社内相談窓口の設置は有効です。社内広報やクオリティ向上対策も同時に進めながら、利用者満足度の高い施策として機能させていきましょう。
フェアワークでは、ストレスチェックや従業員サーベイ、不調者を早期に発見し適切な支援を届けるためのオンラインカウンセリングなど、企業における効果的な従業員ケアをご支援しておりますので、お気軽にお問い合わせください。