メンタル休職率を下げるには?メンタルヘルスケアで重要な4つのケアと3つの予防!
平成29年に行われた厚労省「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、従業員が1,000名以上いる事業所において、メンタル不調を理由に休職する人の割合は0.8%、退職してしまう人の割合は0.2%存在しています。つまり、毎年、従業員の約1%がメンタル不調によって休職・退職しているのが現状です。
こうした背景から、会社側からの積極的な従業員ケア体制の構築が年々望まれるようになっています。
今回は、厚労省のメンタルヘルス指針で重視される「4つのケア」と「3つの予防」について解説します。メンタル不調による休職率・退職率の低減施策を考える際の参考にしてみましょう。(⇒ 「4つのケア」と「3つの予防」に関するまとめ資料をダウンロード)
厚生労働省が提唱する「4つのケア」とは
厚生労働省は2015年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針とも呼ぶ)を定めており、そのなかでメンタルヘルスケアに関する「4つのケア」について提唱しています。
下記でひとつずつ内容を解説するので、重要となる要素についてチェックしてみましょう。
①セルフケア
セルフケアとは、その名の通り従業員各個人がストレスについての正しい知識を持ち、自身でストレスマネジメントを行うことを指します。
ストレスについての理解を高め、定期的に自分の心身の状態を振り返る習慣(セルフモニタリング)が身につけば、メンタル不調の未然予防につながります。
会社側はこうしたセルフケアをサポートするため、ストレスマネジメント研修を実施したり、定期的に自身の状態を確認するためのストレスチェックやパルスサーベイを導入することが有効となるため、注目しておきましょう。
「本人の努力次第だから」と軽視せず、研修の場や仕組みを上手に構築することが大切となります。
②ラインによるケア
ラインによるケアとは、直属の上司・部署長・先輩社員・チームリーダーなど身近な人が実施する取り組みのことを指します。
頻繁に1on1ミーティングをしながら個別に悩みを吸い上げたり、気軽に相談できる雰囲気をつくったりして環境を整えることが重要です。
また、悩む部下がいれば積極的に傾聴・共感することに加え、必要であれば産業医など事業場内産業保健スタッフにアドバイスを求めるなど対応していきましょう。
職場での人間環境を円滑にするための重要なケアでもあり、居心地を改善するきっかけとしても有効です。
③事業場内産業保健スタッフによるケア
事業場内産業保健スタッフによるケアとは、産業医・臨床心理士・カウンセラー・保険氏など産業保健スタッフによる取り組みのことを指します。
専門的な立場から有意義な情報・ノウハウを提供したり、個別にカウンセリングしながら適切なアドバイスをしたりするのが特徴です。
また、衛生管理者と協力してメンタルヘルスケア施策の企画・立案に携わるなど、社内の制度づくりに貢献することも多いです。
④事業場外資源によるケア
事業場外資源によるケアとは、病院・クリニック・精神保健福祉センター・保健所・外部のカウンセリングルームなど事業場外の施設および専門家による取り組みのことを指します。
自社で雇用している産業医ではなく、外部の産業医や臨床心理士を頼る場合もこれに該当します。メンタルヘルスケアに特化したノウハウを提供してもらいやすく、より専門的なアドバイスが欲しいときに有効です。
同居家族やケアする側の社員にも目を向けてくれることにも、注目しておきましょう。
メンタルヘルスの「3つの予防」とは
メンタル不調が起きてから適切に対応することも大切ですが、発生前に未然予防する取り組みも重要です。ワークライフバランスを崩さずストレスフリーな労働環境を作るための「3つの予防」の考え方についても知っておきましょう。
一次予防|メンタル不調を未然に予防する
一次予防は、メンタル不調を未然に防ぐため、その原因やリスクを軽減することを指します。
例えば、ミスコミュニケーションのないストレスフリーな職場環境をつくったり、風通しの良い職場環境を作ったりすることは一次予防として効果的です。ハラスメント予防研修を講じるなど管理監督の教育などを取り入れている会社もあります。
また、ストレスマネジメント研修などで、ストレスについての正しい知識を身に着け、自身でストレスマネジメントを行う習慣を身に着けることも役立ちます。
他にも、下記のようなことに配慮してストレスの原因を取り除いていきましょう。
- 業務効率化による過度な残業・休日出勤の予防
- タレントマネジメントの視点を導入した適材適所での人材配置
- 温度・湿度・照明・騒音に配慮した集中しやすい職場環境づくり
- 運動不足解消に向けた社内部活動・社内レクリエーション
- 社食・リラックスルームを使った業務外の何気ないコミュニケーション
- スリープテックや栄養管理アプリ提供によるセルフケア支援
まずは社内の何がストレスの原因になるか知り、ひとつずつ解消していくことがおすすめです。
二次予防|メンタル不調の早期発見・適切な対処
二次予防は、メンタル不調の早期発見と早期介入をすることです。
早期発見できれば早期の予防介入がしやすくなり、本人だけでなく直属の上司を含めて早めに対策を講じることが可能です。重篤な症状が現れる前に職場環境を改善したり、業務量を調整したり個別に配慮することもできるでしょう。
まずは従業員の状態を定期的かつ高頻度で可視化することが大事になります。例えば、下記のような施策が二次予防として有効です。
- 健康診断およびストレスチェックの実施
- パルスサーベイによるリスクの可視化
- 高頻度で実施する1on1ミーティング
- 長時間労働者や高ストレス者への産業医面談
- 社内コンプライアンス窓口の設置
- 外部の相談窓口との提携
まずは、自分のメンタルヘルス状態に疑問を持った従業員が、適切に支援を求められる環境をつくっていきましょう。
そのうえで、上司・経営者・先輩社員などが部下の不調に気づける体制を講じ、本人も自覚しづらい不調を積極的に感知することが大切です。また、相談されたときに「気のせいじゃないか」「気合が足りていないから体調が悪くなる」など根性論でのアドバイスをしないよう、管理監督者向けの教育(ラインケア研修)を講じることも大切です。
前項の「一次予防」と併せて、対策案を練っておきましょう。
三次予防|治療への専念・スムーズな職場復帰
三次予防は、メンタル不調を理由に休職してしまった人が治療に専念し、スムーズな職場復帰を迎えるための支援のことです。
一見、予防ではなく治療に感じるかもしれませんが、ここでつまづいてしまった場合、却って症状が悪化したり頻繁に再発して、休職・復職を繰り返したりしやすくなるので注意しておきましょう。今後の更なるメンタル不調を防ぐため、三次予防が重要なのです。
例えば、下記のような対策が三次予防策として挙げられます。
- リワークプログラムの導入・活用
- 復職時の試し出勤など柔軟な働き方の促進
- 休職中の従業員に対する精神面でのフォローアップ
- 本人の状態に応じた配置転換・業務量の調整
- 傷病手当金申請についての情報提供
会社側にとっては、「早めに復職してほしい」「早期のうちに戦力化したい」という本音があるかもしれません。しかし、無理に復職を焦ったことにより根本的なメンタルヘルスケアができず、復職後すぐに再休職や退職してしまう人が多いのも事実です。
一般に、うつ病や適応障害などで休職した方の中には、罪悪感や経済的理由から、復職を焦る方も多くいらっしゃるので、会社側は本人の「良くなりました」という意見だけを信じるのではなく、きちんと主治医や産業医と情報共有しながら復職の判断をしましょう。
また、傷病手当金やリワーク機関の情報など、本人の精神的負担を軽減するための情報提供も大切です。
まとめ
従業員のメンタル不調予防を考えるうえでは、「4つのケア」と「3つの予防」という基本的な考え方をベースとして施策を検討することが重要です。
従業員任せにするのではなく、適切な情報提供や環境調整をしながら、従業員が安心して目の前の仕事に集中できる環境を作り上げていきましょう。
フェアワークでは、ストレスチェックや従業員サーベイ、不調者を早期に発見して適切な支援を届けるための相談窓口など、企業文化に合わせて効果的なメンタル不調予防策をご支援しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。