【人的資本とは?開示例についてわかりやすく解説!】

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2021年6月11日に「コーポレートガバナンス・コード」の2回目となる改定がおこなわれました。

世界的な広がりをみせる新型コロナウイルス感染症への対策や、急務とされているサステナビリティに関する観点を企業がより明確に認知すべきであるとされてたことが大きな要因となっていますが、実はこの背景に人的資本の開示について盛り込まれていることをご存知でしょうか。

今回は、コーポレートガバナンス・コードの改定と共にニーズが高まっている人的資本について解説します。

実際の開示例にも触れますので、経営や人事に関わる方はぜひチェックしてみてください。

【人的資本とは?】

人的資本とは

人的資本とは、自社で雇用している人材を資本のひとつだと捉える考え方です。

従業員数やひとりあたりの人件費などで計る方法もありますが、近年における「人的資本」とは従業員ひとりひとりがウェルビーイングな状態であることを指すのが一般的になりつつあります。

つまり、社員が精神的・身体的に満たされ、不安なく業務に集中できるハイパフォーマンスな企業こそが「人的資本経営に成功している」としてみなされるようになっているのです。

コーポレートガバナンス・コードに人的資本の観点が盛り込まれるようになったり、ストレスチェックなどメンタルヘルス対策が企業に求められたりしていることからも、健全な企業活動をするうえで必須の観点として広がっていくでしょう。

【コーポレートガバナンス・コードにおける「人的資本」の見方】

コーポレートガバナンス・コードにおける「人的資本」の見方

前述した通り、2011年6月11日のコーポレートガバナンス・コード改定において、「人的資本」の観点が新たに盛り込まれることとなりました。

例えば、「適切な情報開示と透明性の確保」に関する項目では、補充原則として「人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである」ことが新設されています。

また、取締役会の責務として「人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や、事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである」ことが新設されるなど、人的資本に関する要素が加わっています。

人的資本に関する具体的な定義は定められていませんが、基準となる項目の一例を下記にて紹介します。

引用:株式会社東京証券取引所「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」より

1.コンプライアンス・倫理

市場に参画する企業のひとつとして、ビジネス規範に関するコンプライアンスを問う指標です。

パワーハラスメント・セクシャルハラスメントなど倫理的な問題を起こさなかったか、懲戒処分や懲戒免職の件数が抑えられているかで計れます。

また、コンプライアンス研修を受けた従業員の割合を高めるなど、ポジティブな対策をすることもできるでしょう。

2.コスト

採用・雇用にかけているコストを問う指標です。

総労働力コストを試算したり、ひとり当たりの採用コストを明確にしたりすることで、開示への材料とすることができます。

自社の人的資本にどれくらいの投資をしているか一目でアピールする指標だと分かります。

3.ダイバーシティ

年齢・性別・障害に関わらずダイバーシティ経営をしているかを問う指標です。

近年注目されている女性管理職障害者・高齢者雇用に関する項目を開示することが多いです。

また、経営層などリーダーシップを発揮する人材のダイバーシティをアピールすることもあります。

4.リーダーシップ

上司ひとりあたりが抱えている部下の人数や管理職への信頼を問う指標です。

360度評価など新たな人事評価を導入する企業が増加したことで加わった項目でもあり、社内コミュニケーションの活性化や信頼性の構築に寄与します。

また、リーダーシップ研修やマネジメント研修を積極的に実施している企業であれば、開示できる材料が増加します。

5.組織文化

従業員の定着率従業員エンゲージメントの高さを問う指標です。

ウェルビーイングな組織文化に欠かせない視点であり、普段は見えない従業員のモチベーションを可視化することで提示できるようになります。

日常的に組織サーベイなどを導入している企業であれば、開示の際に役立ちます。

6.健康・安全

従業員の健康・安全に対し適切な対処が取れているかを問う指標です。

特に危険性が高いとされている業種においては、労災の発生件数や死亡事故の件数を問われることが多いでしょう。

安全管理のためにどんな対策・研修をしているかリストアップしておくことが大切です。

7.生産性

人的資本の生産性と組織パフォーマンスへの貢献度合いを問う指標です。

従業員ひとり当たりの売上・利益を算出したり、ROI(投資対効果)など労働生産性を示すことが一般的です。

パフォーマンスの高い企業であれば少ない投資でハイクオリティな仕事をしやすく、評価が高くなる一因になるでしょう。

8.採用・異動・離職

人事プロセス通して適切な人的資本を築いているかを問う指標です。

ひとり当たりの採用コスト・採用にかかる時間など採用に関することだけでなく、離職率離職理由が問われることもあります。

なかには経営層の内部登用率をデータ化している企業もあります。

9.スキル・能力

人的資本の質や内容を問う指標です。

研修の参加率・研修の受講時間・研修にかけた費用などと従業員のコンピテンシー評価シートを比較する方法があります。

投資に見合ったスキルや能力の育成ができているか、問い続ける必要がありそうです。

10.後継者計画

後継者計画の有無や内容の妥当性を問う指標です。

特に歴史のある企業や長期的経営戦略を掲げる企業に問われることが多く、育成の進捗を見るためのものでもあります。

内部継承率・後継者候補準備率など数値で表すケースもあります。

11.労働力

従業員数・フルタイム率・パートアルバイト率などを問う指標です。

人的資本を支える底力となるマンパフォーマンスを計るために重要視されることが多く、企業の成長力を見る基準となることも多いです。

また、労働時間などを算出して生産性の項目と結びつけるケースもあります。

【人的資本の開示例】

人的資本の開示例

ここからは、過去におこなわれた人的資本の開示についてピックアップします。

開示内容についての細則が定められていないからこそ戸惑う企業も多いかと思いますが、前例を参考に自社に合った内容になるようアレンジしていきましょう。

オムロン株式会社|人材マネジメント

オムロン株式会社は、下記3項目における人材マネジメント情報の開示をおこなっています。

  • ダイバーシティ&インクルージョン
  • 従業員の健康
  • 労働安全衛生

ダイバーシティ&インクルージョンの分野では、女性管理職比率の向上・障害者雇用の法定基準クリアなどを話題に出しました。

また、従業員の健康分野では社員の健康意識を高めるオンラインイベントの開催に触れるなどの対策をしています。

OSH国際規格認証を取得している生産拠点の数を全体の8割以上が締めるよう、従業員の労働安全を守るための取り組みをしていることにも触れました。

業態に合わせた対策をしていることが分かる事例です。

株式会社丸井グループ|ウェルネス経営

株式会社丸井グループでは、人の成長を支える「ウェルネス経営」に関する情報開示をおこなっています。

病気にならないこと(基盤)だけでなく、今よりもっと活力高く幸せになること(活力)を重要視し、「活力×基盤のウェルネス経営」を掲げる取り組みをはじめました。

注目が高まっているウェルビーイング経営につながる取り組みでもあり、自社へのエンゲージメント向上施策としても役立っています。

戸田建設株式会社|人材の価値創造

戸田建設株式会社では「人材の価値創造」を掲げ、重要な業務の担い手になり得る経営人事の育成・発掘に努めています。

自己発動型人材をつくることでモチベーション向上を狙う取り組みもあり、伴走型コーチとなるメンターをつける取り組みも始めました。

モチベーションやエンゲージメントを可視化するツールを使うなど、次世代経営人材の育成はもちろん現場社員のマネジメントにも役立てています。

【まとめ】

「コーポレートガバナンス・コード」に人的資本の観点が盛り込まれるなど、企業と人との結びつきを重要視する動きが広がっています。

この潮流に乗れた企業は、市場からの評価はもちろん従業員からの信頼や顧客からのプラスイメージも獲得しやすくなるでしょう。

人的資本の考え方には従業員のモチベーションやエンゲージメントに関する項目があり、日常的に組織サーベイをしておくことが欠かせません。

FairWork surveyは、人的資本経営の実現をするためのサーベイツールです。

組織だけでなく個人のコンディションも可視化できるため、マネジメントや育成に役立てることも可能でしょう。

情報開示に備えて可視化をおこなっておきたい場合は、お気軽にご相談ください。

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