【1on1は意味がない?】「話すことがない」と形骸化させないために
1on1(1on1ミーティング)とは、上司と部下がマンツーマンで対話する社内コミュニケーション手法です。
1on1は定期的に実施することが特徴であり、リアルタイムで発生している部下の悩み・相談事をキャッチできる場として活用されてきました。
1回の1on1にかかる時間は10~20分と短く、本来の業務に支障が出づらいこともメリットです。
しかし、「1on1には意味がないし、無駄なだけ」と感じる人も一定数いることは事実です。
なぜ1on1は形骸化しやすいのでしょうか。
今回は1on1を形骸化させず、有意義な場にするための工夫を紹介します。
【「1on1には意味がない」と感じる理由】
まずは、なぜ「1on1には意味がない」と感じてしまうのか、理由を解説します。
下記に当てはまる1on1の場合、却って部下から不満が続出する可能性があるため注意しておきましょう。
話すことが毎回同じで時間がもったいないから
1on1で話すことが毎回似通っていると、「時間が勿体ない」と感じてしまいます。
通常の評価面談と異なり比較的短時間で完結する1on1ですが、業務の手を止めて実施する以上、無駄なものではなく意義を感じたいというのが正直な本音でしょう。
しかし1on1の狙いが分からず雑談ばかりに終始していた場合、「果たして1on1をやる意味があるのだろうか」と感じてしまうことも当然です。
「何か困ったことはない?」と抽象的な質問をされ、「特にありません」と1on1が終了することも該当します。
1on1は長期的に続く取り組みであるため、毎回話すテーマを変えて飽きを防ぐのが理想です。
また、業務に直結するフィードバックや課題の解決をするなど、有意義な話し合いとなるよう工夫していきましょう。
効果的なマネジメントが得られず却って不信感が高まるから
1on1の場で上司に悩みを相談しても効果的なアドバイスが得られない場合、却って不信感が高まります。
「1on1で相談しても意味がない、無駄だった」と感じてしまい、やがて部下から相談されることは減っていくでしょう。
お互いに顔色を伺うようなコミュニケーションになってしまうことには注意が必要です。
前回の1on1でアドバイスした内容は次回の1on1でも振り返り、問題なく実行できたか、どの程度効果が現れたか確認してみましょう。
万が一効果がなければ他の方法を試したり他の部門のメンバーを頼ったり、新たな手を打つ必要があります。
たとえ手探りのマネジメントであっても上司が身を粉にして向き合ってくれる様子があれば、信頼感が崩れることはありません。
上司が否定的・高圧的で嫌気が差すから
上司が否定的・高圧的な態度で接する場合、1on1の時間そのものに嫌気が差してしまうでしょう。
「あの上司は高圧的だから嫌い」という風にネガティブな印象が根付いてしまうリスクもあります。
また、1on1はプライベートを含めて相互理解する場として役立つものの、必要以上にプライベートに踏み込んだ質問ばかり繰り返す場合も危険です。
時にはハラスメント認定されるなど、信頼関係にヒビが入る要因にもなるでしょう。
1on1において特に重要なのは、「傾聴すること」です。
部下の話に耳を傾け、否定せず共感しながら解決策を探ることができれば、1on1が有意義な場となるでしょう。
【有意義な1on1にする方法】
1on1を有意義な場にするために、事前に話すことを決めておくとよいでしょう。
下記のような手法を取れば、話すことには困りません。
- 前回話した内容を細かく記録しておく
- 組織サーベイの内容を1on1に活用する
- 全員に同じテーマを設定し事前に伝えておく
下記でひとつずつ解説します。
➢ 前回話した内容を細かく記録しておき、その振り返りから始める
毎回同じことを聞かれ、同じことを答えるのでは、「時間の無駄」という印象を持たれてしまいます。
前回話した内容を細かく記録しておき、次回はその振り返りから始めることが大事になるでしょう。
前回の内容をもとに何かしら変化があったか確認すれば、効果的なマネジメントができる可能性も上がります。
また、変化がなかったとしても、別の方法をふたりで模索するなど、新たな手が打てるようになります。
上司のマネジメント力を上げるためにも、ぜひ実践することをおすすめします。
また、前回話した内容を上司が覚えてくれているということは、内容が何気ない雑談のことであっても嬉しいものです。
ちょっとした気遣いが部下のエンゲージメントやモチベーションに影響するため、併せて検討してみましょう。
➢ 組織サーベイの内容を1on1に活用する
組織サーベイとは、従業員のコンディションを可視化するため定期的に実施するアンケート調査です。
5分程度で回答できる小規模なアンケートを毎月の頻度で繰り返し、コンディションの変遷を見守ります。
目的に応じて可視化する項目を設定しますが、代表的なものとしては下記が挙げられます。
- 業務パフォーマンス
- エンゲージメント(従業員満足度)
- 幸福度(ウェルビーイング)
- 心理的安全性
- 体調不良やメンタル不調(プレゼンティーズム)
- その他、フリーコメント
組織サーベイを1on1と同サイクルで実施することで、結果をもとにした話しあいができるため、よりリアルタイムな困りごとに焦点を合わせた、意義ある1on1が実施できるようになります。
「前回よりも業務パフォーマンスが下がっている」「心身の不調が増している」など変化を確認しやすく、より迅速かつ的確なフォローアップが可能となります。
➢ 全員に同じテーマを設定し事前に伝えておく
1on1が軌道に乗るまでの間は、全員に同じテーマを設定するのもひとつの方法です。
事前にテーマを伝えておけば部下側も準備できるため、「特に話すことはありません」と1on1が終了することを防げます。
1on1で話すテーマは、目的別に大きく下記4項目に分けられます。
- 相互理解を深める
- 部下を育成する
- チーム力・組織力を向上する
- 戦略を共有する
下記で詳しく解説します。
【1on1における代表的なテーマ例】
1on1における代表的なテーマ例として、下記4つを挙げました。
事例とともに紹介するため、アジェンダづくりに迷っている際には、ぜひお役立てください。
① 相互理解を深める
相互理解を深めるためには、プライベートなど業務外の話をテーマにするとよいでしょう。
- 休日や長期休暇の過ごし方
- 家族・親戚
- ペット・趣味
- 学生時代の部活の話
- 最近見た映画・小説・アニメなど
特に信頼関係を構築しきれていない組織の場合、まずは相互理解から入るのがおすすめです。
② 部下を育成する
部下を育成するための場として1on1を活用する場合、下記のようなテーマにするとよいでしょう。
- 直近で担当しているプロジェクトに関する困りごと
- 5年後10年後のキャリアプラン
- 今後希望する部署・役職・報酬
- 理想的な働き方
「自分が成長するための場」として1on1を捉えてもらえるため、より有意義になることがメリットです。
③ チーム力・組織力を向上する
1on1はマンツーマンで面談する場ではありますが、チーム力・組織力強化に関するテーマを出すことも可能です。
- 社内コミュニケーションをするうえでの困りごと
- 次回の忘年会・新年会に対する要望
- 新しく採用してほしい人材のイメージ
- 普段仲のよい同期・同僚について
1on1で話した内容から、組織づくりのヒントが生まれることは少なくありません。
部下だけでなく上司にとってもメリットの多い話し合いとなるため、導入してみましょう。
④ 戦略を共有する
新規商材の販売戦略などについて、詳しく共有する場として活用することもできます。
- 今度売り出す新規商材に対する質問受け付け
- 自社の成長戦略の共有
- ミッション・ビジョン・バリューの浸透
上記のようなことと紐づけて、部下個人に期待していることまで落とし込むのが理想です。
「自分が何を期待されているか」が分かれば、努力の方向性を会社と一致させることができるでしょう。
結果的に査定で評価されやすくなるなど、部下側にもメリットが生まれます。
まとめ
1on1自体は非常にメリットのある取り組みでありながら、運用手法次第では「意味がない」「時間の無駄」と受け取られてしまうこともあるでしょう。
却って信頼関係にヒビが入ることのないよう、事前に話す内容を決めておき、前回の振り返りと継続的な変化を追うことが大事になります。
「FairWork survey」は、個人のコンディションを可視化する組織サーベイツールです。
1on1をより有意義になものにするため、部下の困りごとの把握や、継続的な施策効果の測定にご活用ください。
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