2014年に経済産業省が「企業による健康経営」を推奨したことをきっかけに、従業員の健康管理を経営的な視点で考える企業が増えています。2020年には、管理会計手法によって健康経営の実施を図る「健康投資管理会計ガイドライン」も策定され、ますます注目度が高まりました。

今回は、健康経営を阻害するプレゼンティーズムについて、詳しく解説します。

アブセンティーズムとの違いや、プレゼンティーズム測定方法についても触れますので、健康経営戦略への糸口を掴むのにお役立てください。

プレゼンティーズムとは

プレゼンティーズムは、体調不良・心身不調を抱えながら働いている従業員がいる状態を指す用語です。「疾病出勤」と訳される通り、健康に何かしらの問題を抱えたまま働いている従業員がいれば、プレゼンティーズムに当てはまると言えるでしょう。

長期的に治療が必要な病気・怪我・メンタルヘルスだけでなく、二日酔いや寝不足など突発的な体調不良もプレゼンティーズムに含みます。

自社の従業員がプレゼンティーズムを抱えていないか測定し、健康経営に役立てていくことが急務だと言えるでしょう。

アブセンティーズムとの違い

アブセンティーズムは、体調不良・心身不調が原因で勤怠に影響が出ている状態を指す用語です。プレゼンティーズムの結果として現れるものであり、欠勤・遅刻・早退など、業務に穴を開けてしまっている状態だと分かります。

ときにプレゼンティーズムと混同されることもありますが、経済産業省では下記の通り明確に使い分けています。

プレゼンティーズムは「欠勤にはいたっておらず健康管理上は表にでてこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態」、アブセンティーズムは「健康問題による仕事の欠勤(病欠)」を意味すると定義しました。     

(※引用:経済産業省「健康経営オフィスレポート」より

まずはプレゼンティーズムの測定をし、アブセンティーズムにまで発展することを防ぐことがポイントです。

プレゼンティーズム測定による健康経営対策のメリット

健康経営対策

誰しも「従業員は健康な方がいい」という印象を持ちますが、具体的にプレゼンティーズムを測定し、健康経営に活かすメリットはどこにあるのでしょうか。

下記では、健康が会社に与える影響について解説します。

①生産性向上を図れる

体調が悪いと、ケアレスミスが増えたりぼーっとして仕事に集中できなかったりすることが想定されます。

ちょっとした体調不良だとしても、全く体調に問題がないときと比較すれば、100%の業務パフォーマンスは発揮できなくなるでしょう。治療に時間がかかる病気・怪我や慢性的な体調不良であれば、その影響は大きくなります。

反対に、プレゼンティーズムを指標のひとつとして測定し、健康経営に役立てることができれば、生産性向上が図れるということです。

同じ時間でも高い生産性を上げられれば、企業収益も向上しやすくなるでしょう。従業員本人も「仕事が楽しい」「最近調子がいい」と思いやすく、自然とモチベーションが上がります。

②保険料・医療費負担を抑えられる

プレゼンティーズムを原因としてアブセンティーズムにまで発展した場合、企業側のコストはより高くなります。

例えば、従業員が休職した場合であっても、その期間の社会保険料は免除されません。休職する従業員本人は傷病手当金や個人加入している保険から支援が受けられますが、会社が折半負担する保険料に対する補償はないのです。

つまり、働いていない従業員に対しても労務コストが発生するということであり、期間が長くなればなるほど負担は増していくでしょう。

また、福利厚生で医療費サポートをしている会社であれば、その負担も加味しておく必要があります。

保険料・医療費負担を抑えるためにも、健康経営に関する指標が大事なのです。

③退職率を下げられる

早期の段階でプレゼンティーズムに気がつき、適切な対処ができれば、従業員の退職を阻止できます。

なかには自分がプレゼンティーズムを抱えていることに気がつかない従業員も多く、特にメンタルヘルスの分野では「突然出勤できなくなり、退職せざるを得なくなった」ということも起こり得ます。仕事に穴が空いて現場が混乱するだけでなく、新しい人材を採用するコストもかかり、両者共にデメリットとなります。

本人でも気がつかないリスクを数値化すれば、早期の段階でアプローチできるでしょう。働き方を変える、部署を異動させる、定期的に面談をおこなう、産業医など適切な専門家につなげるというように、個々に対策を取ることも可能です。

また、「会社に助けてもらえた」という印象を抱かれやすく、従業員エンゲージメント向上施策としても有効です。

④労災防止になる

深刻なプレゼンティーズムが発生すると、ときには労災として認定される場合があります。

特に、パワハラ・セクハラなどハラスメントに関するストレスや、規程時間を大幅に超える残業・休日出勤など労働環境の悪化が原因のプレゼンティーズムであった場合は、会社としての責任が問われるでしょう。

労災が適用されたからといって会社に直接損害金が請求されることはありませんが、内容や頻度によっては、労働基準監督署から是正勧告を受けることも想定されます。

プレゼンティーズムを測定し、自社の労働環境に問題があると気づければ、大きなトラブルになる前に社内規則・社内風土の見直しができます。

労使裁判のリスク低減の一環としても、正しく自社のプレゼンティーズムを測定していくことが欠かせません。

⑤社内外からの企業イメージがあがる

従業員がいつも健康で生き生きと働いている会社は、社内外からのイメージがよくなります。

社外からは、「どの部署の人も明るく元気に対応してくれる」「パフォーマンスの優れた会社なので今後も取引を継続したい」という声が集まるでしょう。

社内からは、「万が一健康問題が出てきても会社が適切に阻止してくれる」「従業員を大切にしてくれる会社で働けている」という満足感を得られます。

一朝一夕では築けない根本的な企業イメージ向上になる可能性があり、プレゼンティーズム測定による健康経営の重要性が分かります。

プレゼンティーズムの測定方法

プレゼンティーズムの測定方法

プレゼンティーズムの代表的な測定方法として、下記の5種類提言されています。

測定方法概要
WHO-HPQWHO で世界的に使用されている「WHO 健康と労働パフォーマンスに関する質問紙(ハーバードメディカルスクール作成)」を用い、3 つの設問で評価する。得点方法は、①絶対的プレゼンティーイズムと②相対的プレゼンティーイズムの2つの方法で表示される。
東大1項目版アンケートの設問数を減らしたいなどの理由により、プレゼンティーイズムの意味をそのまま反映したアンケート 1 項目にて取得する項目を東京大学WG にて作成したもの。
WLQWLQ(Work Limitations Questionnaire、タフツ大学医学部作成)の日本語版。全 25 問の質問項目からなり、「時間管理」5 問・「身体27活動」6 問・「集中力・対人関係」9 問・「仕事の結果」5 問で構成されている。
WFun産業医科大学で開発された、健康問題による労働機能障害の程度を測定するための調査票。7 つの設問を聴取し、合計得点(7~35 点)で点数化する。点数が高い方が、労働機能障害の程度が大きいことを示す。
QQmethod何らかの症状(健康問題)の有無を確認したうえで、「有り」の場合は、・「仕事に一番影響をもたらしている健康問題は何か」・「この 3か月間で何日間その症状があったか」・「症状がない時に比べ、症状がある時はどの程度の仕事量になるか(10 段階評価)」・「症状がない時に比べ、症状がある時はどの程度の仕事の質になるか(10 段階評価)」を把握する方法。
※引用:経済産業省「企業の健康経営ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」より

上記いずれの手法を取る場合でも、自社で測定するか、ツールを使って測定するか、考えていく必要があるでしょう。

1. 自社でプレゼンティーズム測定をおこなう

自社でプレゼンティーズム測定をする場合、上記で紹介した測定方法からいずれの手法を採用するか決め、従業員にアンケートをおこなう必要があります。

手法を自由に選べること、アンケートを取るタイミングを設定できることが、メリットだと言えるでしょう。

反対にデメリットとして、アンケートフォーマットを用意する手間やコストがかかる点や、ノウハウが必要な点があげられます。

これから健康経営対策をしようとする企業にとってはハードルが高く、何が正解なのか分からず、ゴールを見失ってしまうこともあるでしょう。

また、従業員から回収したアンケートの集計作業も発生するため、専任の担当者を置く必要も出てきます。

2. 組織サーベイに特化したツールをつかう

組織サーベイに特化したツールのなかには、プレゼンティーズムを可視化できるものも存在します。1~2分で回答が終わる簡単なアンケートを従業員に配信し、回答を自動集計するシステムであり、煩雑な事務手続きを短縮できます。

退職兆候エンゲージメントモチベーションヘルスリテラシーなども同時に可視化できるものもあり、短時間で確実な測定がおこなえるでしょう。

人事・労務に関する専門知識がなくても導入しやすく、アンケート回答に対する従業員の心理的ハードルを下げやすいUI/UXになっていることも多いです。

複数のツールを比較・検討しながら自社に合ったものを選定できれば、手間を削減史ながら早期の段階で健康経営対策ができるでしょう。

まとめ

プレゼンティーズムとは、体調不良・心身不調を抱えながら働いている従業員がいる状態を指す用語です。程度が重くなれば欠勤・遅刻・早退や退職につながるアブセンティーズムにまで発展する可能性があり、健康経営が遠のいてしまうでしょう。

まずは、自社従業員が抱える体調面・心理面での問題を測定し、正しく状況を把握することが先決です。

FairWork survey」では、プレゼンティーズムをはじめとする会社のコンディションを可視化し、健康経営の促進を叶えます。測定方法にお困りの場合は、お気軽にご相談ください。