【ISO30414とは?】人的資本の情報開示と記載項目について

ISO30414とは

2021年6月にコーポレートガバナンスコードが改定されたことやSDGsに関する注目度が高まっていることを受け、企業における人的資本に関する情報開示ニーズが高まっています。

そして、人的資本に関する情報開示のガイドラインとして「ISO30414」が用いられており、「どんな情報を公開すればいいか分からない」という企業の助けとなってきました。

今回は、外部のステークホルダーに人的資本に関する情報開示をする際に活用したい「ISO30414」について解説します。

記載項目もひとつずつピックアップしながら解説するため、自社の情報と照らし合わせながらお役立てください。

目次

【ISO30414とは?日本語版(和訳)はある?】

ISO30414とは、国際標準化機構(ISO)が2018年に発表した人的資本に関する情報開示のガイドラインです。

それまでの投資市場では、企業の価値指標として最も重要なものは財務諸表だとされていました。

貸借対照表や損益計算書などから企業の財務健全性を確認し、モノとカネの観点から評価していく手法が一般的だったのです。

しかしリーマン・ショックをきっかけに財務諸表だけで判断する危険性や、数値に現れない企業の価値があるという考え方が広がりました。

以降は「ヒト」の観点を加えた持続可能な人事・労務施策が問われるようになり、人的資本の考え方が根付きつつあるのです。

「人的資本」という比較的新しい価値基準に統一性を持たせるために提唱されたものが「ISO30414」であり、国際規格のひとつとして広がっています。

日本語版は、2021年4月15日、和訳版が日本規格協会(JSA)から発行され、同協会のウェブサイトから購入できる状態です。今後、我が国においても人的資本の情報開示の加速が期待されます。

【ISO30414における記載項目】

ISO30414における記載項目

ISO30414では、11領域に渡る項目が記載されています。

ここではISO30414に関する理解を深めるためにも、おおまかに4つのジャンルに分けて内容をチェックしていきましょう。

今後の人的資本経営施策を考える際にも重要なグルーピングとなるため、ぜひ参考にしてみてください。

➢ 組織のあり方に関する項目

ISO30414における下記の4項目は、組織のあり方に関する項目です。

  • コンプライアンス・倫理
  • ダイバーシティ
  • 組織文化
  • 健康・安全

「コンプライアンス・倫理」とは、社会を構成するひとつの企業として法律・制度を遵守した企業活動であることを示す指標です。

また、セクハラ・パワハラ・横領・個人情報の漏洩・反社会的勢力とのつながりなど、人的かつ意図的に引き起こされる瑕疵に関する内容もここに当てはまります。

「ダイバーシティ」とは、いわゆる「全員参加型社会」の実現に向けた取り組みに関する指標です。

男女共同参画社会を目指して女性の管理職比率や男性の育児休業取得比率を上げる取り組みはもちろん、高齢者・障害者を積極雇用することによるダイバーシティも含まれます。

「組織文化」とは、自社ならではの社風・理念・ミッション・ビジョン・バリューが築けているかを問う指標です。

一見すると数値的な管理が難しい曖昧な基準に思われるかもしれませんが、組織サーベイなどを用いたエンゲージメントモチベーションの数値化などが可能です。

従業員のエンゲージメントが高ければモチベーションも高くなり、結果的にパフォーマンスの向上につながるという観点から、組織文化を重視する企業も多くなっています。

「健康・安全」とは、健康問題を抱えながら働くプレゼンティーズムを抱えた社員数を問う指標です。

健康診断やストレスチェックの実施による日常的なヘルスケア意識の引き上げや、労災の発生件数・職場の安全環境などチェックすべき項目は多いでしょう。

心身共にリスクなく働ける職場であることを示す項目であり、まさに人を資本として考える「人的資本」ならではの指標であると分かります。

➢ 経営に関する項目

ISO30414における下記の2項目は、経営に関する項目です。

  • リーダーシップ
  • 後継者育成

「リーダーシップ」とは、上司が部下から集めている信頼度の高さを問う指標です。

360度評価など近年新たに見られている人事評価制度で可視化することができ、年功序列に縛られないリーダーシップ発揮型の人材育成が欠かせなくなっています。

また、ひとりの上司が抱えている部下の人数が適正かなど、適切なマネジメントを実行するための施策を打ち出している企業も多いです。

「後継者育成」とはその名の通り、次世代のリーダーとなる後継者を育成できているか問う指標です。

特に経営に関する業務は属人化しやすいとされており、強烈なリーダーシップを発揮する経営層・創業者がいる一方、その人が引退してしまうと次の世代にノウハウが引き継がれなくなってしまう危険性があります。

長期的な企業成長の根幹があると知ってもらうためにも、後継者に関する項目を開示しておくべきだと分かります。

➢ 人材管理に関する内容

ISO30414における下記の3項目は、人材管理に関する項目です。

  • 採用・異動・離職
  • スキル・能力
  • 労働力

「採用・異動・離職」は、ひとりあたりの採用にかかるコストやその後の教育体制を可視化し、効率よく育成できているかを問う指標です。

例え採用数が多くても離職数が高ければ、人的資本が根付かない企業としてみなされてしまうでしょう。

勤続年数が長くても新規採用人数がゼロのまま変わっていない場合、社内体制の変化や企業成長に乏しいという見方ができてしまうかもしれません。

採用・育成のサイクルを築いていくことが、人的資本経営の必須要素だと分かります。

「スキル・能力」は、前述した「採用・異動・離職」に伴う育成にフォーカスした指標です。

研修の開催・参加率・その後のパフォーマンスやモチベーションの上下などを可視化し、より必要な研修を実施するための指標だと言えるでしょう。

「労働力」は、企業成長を支える根本的な労働力が足りているかを計る指標です。

従業員はもちろん、正社員比率・パートアルバイト比率なども算出しながら、必要な人員を確保していきます。

また、欠勤・遅刻・早退など勤怠が自社の労働力に与えている影響も可視化できれば、その原因を探っていくきっかけとしても有効です。

➢ 人事効果に関する項目

ISO30414における下記の2項目は、人事効果に関する項目です。

  • コスト
  • 生産性

「コスト」とは、採用・教育など人的資本の確保にかけているコストを問う指標です。

一般的に企業価値を判断するためのコストは、売上・原材料の仕入額など商品・サービスの売買に関する項目であることが多いですが、ISO30414をはじめとする人的資本における「コスト」は人にかけたコストのことを指します。

採用コストや労働力コストを試算する一方、福利厚生など働きやすさのための投資しているコストも含みます。

「生産性」とは、人的資本が組織のパフォーマンスに与えている影響力を問う指標です。

モチベーションエンゲージメントなど数値では現れにくい部分を組織サーベイしながら可視化する方法も、ひとり当たりの売上額・利益などを試算する方法もあるでしょう。

よりハイパフォーマンスな働きを期待するためにも、定期的にチェックしたい項目です。

【HRテクノロジーを活用した人的資本の情報開示】

【HRテクノロジーを活用した人的資本の情報開示法】

上記で紹介したISO30414における記載項目のなかには、既に数値で統計を取っている項目もあれば、これまで気にしてこなかった新たな項目が含まれていることもあるでしょう。

特に従業員のやる気を表す「モチベーション」や、自社への帰属意識を表す「エンゲージメント」は可視化しづらい項目と言われており、直接の聞き取りや普段の就業態度からだけでは分かりづらいとされています。

そのため、ISO30414に基づいた人的資本の情報開示をするために、HRテクノロジーを活用する企業が多くなってきました。

例えば採用管理システムを導入した場合、募集媒体ごとの母集団形成状況や内定率・内定辞退率・入社後の平均勤続年数などを一度に可視化できます。

労務管理システムを導入すれば、有給取得率・産休育休取得率・女性管理職の総数なども可視化しやすくなるでしょう。

自社が置かれている状況や現在の最新情報を知るためには、テクノロジーを活用することが近道です。

人事業務に関する情報を一元管理できるため業務効率の改善にも役立つことから、企業成長だけでなく現場のパフォーマンスを助ける取り組みとして非常に有意義なものになっていくでしょう。

【まとめ】

ISO30414に沿って人的資本の情報開示をおこなうことで、労働力の持続可能性を内外に示すことが可能です。

組織の透明性を高め自社の課題を発見するきっかけにもなるため、多くの企業が導入するようになりました。

それに伴いHRテクノロジーを活用した組織サーベイも広がっており、状況把握に便利なツールとして認められています。

FairWork surveyは、従業員の幸福度・エンゲージメント・モチベーションなどを可視化できるツールです。

プレゼンティーズムやヘルスリテラシーなど健康関連の調査もできるため、人的資本に関する情報収集をしたいシーンにご利用ください。

フェアワークでは、精神科医・公認心理師をはじめとする専門家チームが健康経営の推進をご支援いたします。

産業医契約ストレスチェックや、ストレス対策セミナーまで、まずはお気軽にお問合せください。

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